連載「つたえること・つたわるもの」(46)
ビジネスガール、オフィスレディ、キャリアウーマン、キャリジョ。
連載 2018-08-07
戦後しばらく、企業で働く女性(当時のイメージは女子事務員)を「BG(ビジネスガール)」と呼んでいたが、売春婦を想起させるとして、東京オリンピック前年の1963年、NHKが放送禁止用語とした。それまでの呼び方に、「サラリーマン」対義語である「サラリーガール」もあったが、同年、「新しい時代の働く女性」を表す言葉として、週刊誌『女性自身』の公募で選ばれた「ОL(オフィスレディ)」が登場し、しばらくはОLの時代が続く。このころ、私より十歳上の先輩記者が、女性のダンプ運転手(通称、姫トラ)の記事に、「女だてらにダンプの運転手」というタイトルをつけたので、それは「オカシイ」と進言したが、「何でオカシイ」と逆ねじを巻かれたことがある。1960年代後半は、そんな時代だった。
その後、女性の社会進出、管理職への女性登用が一般化するなかで、女性のキャリア(職務経歴)に光を当てた「キャリアウーマン」という呼び名が登場した。しかし、これはジェンダー(社会的性差)に問題があるという意見もあった。しかしたとえば、ビジネスマン→ビジネスパーソン/カメラマン→カメラパーソンのように、キャリアパーソンとする造語はなじみにくい。そこで、もっとよい呼び方はないものかと模索するうちに、2014年、STAP細胞論文で一躍話題の人となった小保方春子さんに「リケジョ(理系女子)」というネーミングが飛び出した。そして、昨年2月、博報堂キャリジョ研(生活者研究講座)が実施した調査から、「ОLという言葉は時代に合っていないと思う」(68.2%)という結果が出たという。
今春出版された『働く女の腹の底』(博報堂キャリジョ研、光文社新書、2018年)を読むと、企業で働く女性を表す最新の呼び名「キャリジョ」と、さらにキャリジョの働き方別クラスター(集団)の分け方、またその生態描写が面白い。ぜひ、図書館の貸し出し予約、あるいは書店での立ち読みをお勧めしたい。
博報堂キャリジョ研の母体である博報堂生活総合研究所は、これまでにも「スニーカーミドル」「無境界現象」「分衆」「タウン・ウオッチング」「オイコットライフ」「感動ホルモン」「秒的人間」「高シングル社会」「まさつ回避世代」など、ユニークな「造語」で、昭和から平成の時代をずっと牽引してきた。
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