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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、2017年の天然ゴム相場

連載 2017-12-25


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 2017年のTOCOM天然ゴム先物相場は、上海ゴム相場の動向に振り回された1年間だったと総括できる。国際ゴム価格形成における上海ゴム市場の重要性が増しているが、その上海ゴム相場が投機色の強いボラタイルな展開になったことで、短いタイムサイクルで急伸と急落を繰り返す不安定な相場展開が目立った。

 価格トレンドとしては、上期に16年後半の急騰相場に対する反動安となる一方、下期には生産国の安値限界ラインを意識して下げ渋る展開になった。年間平均価格は、16年の1キロ=175.99円に対して、17年(12月20日時点)は227.74円と、29.4%値上がりしている。

 年初からは16年10-12月期の急伸地合を引き継ぎ、1月31日には年間最高値となる366.70円を記録した。これは11年9月以来の高値であり、16年後半から続く上海ゴム主導の上昇地合が維持された。

 16年後半には、中国の資本流出懸念から中国通貨人民元安と連動する形でコモディティ市場に対する投機人気が高まっていたが、上海ゴム相場の場合だと2月15日までは上昇地合を維持している。

 ただ、その後は資本流出懸念の後退で人民元相場がリバウンド傾向を強め、上海ゴム相場は下げに転じた。景気回復に自信を強めた中国当局が過剰生産能力の解消に動き始める中、天然ゴムのみならず鉄鉱石や石炭など幅広い素材市況から投機マネーが流出し、その流れの中でゴム相場も急落地合を形成している。6月7日には年間安値となる178.80円を付けているが、1月の高値からは実に51.2%の急落相場になった。

 もっとも、年後半に入ると200円の節目を挟んで押し目買いと戻り売りが交錯する展開になり、明確な方向性を打ち出すことはできなかった。

 10月に開催された中国共産党大会では、大気汚染対策への強化方針が打ち出されたが、中国資源需要環境に対しては楽観と悲観とが交錯し、前者が優勢になった9月には234.70円までリバウンドする一方、後者が優勢になった11月には187.80円まで反落し、200円の節目前後で明確な方向性を打ち出せずに年末を迎えた。

 ただ、11月下旬には価格低迷に危機感を強めた生産国が輸出規制で合意し、更にタイ政府は独自に20万トン規模のゴム在庫の買い上げを行う方針を示している。生産国の市況対策によって、ゴム相場の安値是正を促すことができるか、18年に論点を持ち越した格好になる。

 需給面では、好天を背景に年間生産量が前年比で5%近く伸びた可能性がある一方、需要は1%強の伸び率に留まった見通しであり、需給タイト感は乏しかった。

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