連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」⑫
Lanxessは合成ゴムを見捨てた?
連載 2018-08-21
加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
合成ゴムを世界で一番初めに開発したのはドイツのバイエル社(旧名はIG社、今のLanxess社)です。Lanxess日本のWEBSITEには以下の記述があります。
「1909 年、化学者フリッツ・ホフマンは弾力性のある物質であるメチルイソプレンの製造に成功し、合成ゴム開発への道を開きました。ホフマンは、「Elberfelder Farbenfabriken vorm. Friedr. Bayer & Co.」の研究室で研究をし、その会社の伝統は特殊化学品グループであるランクセスによって今日も引き継がれています。その当時は、ゴムについてはあまり知られていませんでした。たとえば、化学者がこの弾力性のある物質の鎖状分子が無数のイソプレン分子繊維で構成されていることを発見したのは 1905 年のことで、当時はその情報をクロスリンクする方法を知る人は誰もいませんでした。ホフマンはそれに挑戦しました。「天然ゴムモジュール」イソプレンの製造は難しかったため、化学構造が非常に似ており、簡単に製造できるメチルイソプレンを使用してすぐに解決しました。ホフマンはこの原料をスズ製容器に入れ、加熱して待ちました。時には数か月も待ちました。適用温度に応じて、スズ製容器で製造した物質は柔らかくなったり、硬くなったりはしましたが、常に弾力性がありました。その結果、ホフマンはメチルゴムを発明しました。こうして 100 年前の、1909 年 9 月 12 日に、世界で最初の合成ゴムの特許が取得されました。当時からすでに主要なゴム会社であったコンチネンタル社は、1910 年にこの新しい物質から最初の自動車用タイヤの製造を開始しました」
Lanxess社は世界規模で各種の合成ゴム、SBR,BR,ブチル、EPDM,NBR,CRを製造しています。ある意味では世界一の合成ゴム会社でした。
そのLanxess社は今回、合成ゴム事業を完全に売却し、合成ゴム事業から離れることを決定しました。2018年8月8日に合成ゴム事業をすべて売却する予定であることを発表しました。
すでに2年前にLanxessは合成ゴム製造部門を世界一の石油会社サウジアラムコ(ARAMCO)との50%ずつの合弁会社ARLANXEOに移しています。50%分をARAMCOに売り、その売却代金をLanxessの他の分野の事業投資に使いました。今回残りの50%分をすべてARAMCOに売却し、Lanxessは合成ゴム事業からすべて離れることになります。なおLanxessはゴム薬品事業は売却せず、今後も製造販売します。
どうしてLanxessは合成ゴム事業を見捨てたのでしょう?利益が少ないから?中国の投資(EPDM工場とNBR工場)で稼働率があがらず大赤字だから?価格競争が激しいから?
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