連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」⑫
Lanxessは合成ゴムを見捨てた?
連載 2018-08-21
どれもその要因かもしれませんが、今後の展開が見込めないからというのが本当の理由かもしれません。今回はARAMCOの方からLanxessに残りの50%株式を約1750億円で買い取りたいと提案がありました。サウジアラビアの国策で石油を売るのではなく、もっと高級品で売りたい。石化製品で収益を上げたいと国(王家)が考えています。10年後を考えると、産油国の石化会社(例えばサウジARAMCO, SABIC)が自社でブタジエン、エチレン、プロピレンを安く生産し価格競争力を持つでしょう。また米国の合成ゴムメーカーがシェールガスオイルから安いエチレンを得て、競争力があるEPDMを製造するでしょう(例えばDow、ExxonMobilChemical)。今後伸びると言われているS-SBRではLanxessはよいグレードを開発できていません。Lanxessは欧米の合成ゴム工場では利益を出しているでしょうが、今後10年を考えるとLanxessにとって、今が合成ゴム事業の売り時なのかもしれません。
今後合成ゴムの主なメーカー、プレーヤーの顔ぶれが変わってくることが予想されます。サウジアラビア資本、シェールガス資本、インド資本、韓国の大型増強組、日本のS-SBR勝ち組、特殊合成ゴムのメーカー等、今までの合成ゴムメーカー(Lanxess、Goodyear, Enichem, JSR)と異なるグループが世界のメインサプライヤーになるでしょう。
さてLanxessからサウジアラビア系ARLANXEOになるとどう変わるか?主要営業部門の人は今までLanxessからの出向者、または日本ではLanxess日本がARLANXEOの代理として活動してきましたが、人が変わる、商流が変わる可能性もあります。ARLANXEOシンガポールが日本窓口に?またはARLANXEO Japanができる?心配なのは販売方針が変わることです。ARAMCOの営業はLanxessが主導してきましたが、すでに半年前からARAMCOがLanxessに対して、営業方針について、よくわかっていないのに、いろいろ口を出してきて困っているといううわさもきいていますので。また住友化学がARAMCOとの合弁でまもなくEPDM工場を完成させますが、これもどうなるでしょうか?合弁相手が競争相手のEPDM事業をやることになりますから。この新工場では住友グレードだけでなく、ARLANXEOグレードを作るのでしょう?
Lanxessはゴム薬品事業を今後も続けますので、ゴム業界がダメというわけではありませんが、収益を考えると、合成ゴム事業は、製造設備の投資にくらべて収益が少ないと冷静に判断したのでしょう。一方ある意味では日本の合成ゴムメーカーにとって、今回の決定はチャンスだと思います。
以下はランクセス株式会社(日本)のプレスリリースです。
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