【シリーズ】SUSTAINABLE&RUBBER
日加R&E、粉砕の先を、パートナーと共に考える。再生ゴムチップ事業の現在とこれから
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-10-01
ゴム板の製造および加工時に出る工程廃材から生まれた、安全で高品質な再生ゴムチップ。日加R&Eは、ゴムチップのリサイクルとエンジニアリングを通じ、子どもたちの遊び場や公共施設の安全性を高めている。さらに、英国老舗ブーツブランド「HUNTER」とのコラボレーションにより、新たなリサイクルモデルを確立。微細粉末ゴム事業への参入も開始するなど、循環型社会の実現に向けた取り組みを加速させている。
舗装材「スーパーロードPRO」で公共の安心・安全に貢献
2016年に、ゴム専門商社・日加商工のグループ会社として設立された日加R&E。「R&Eは『リサイクリング&エンジニアリング』の略で、両事業の特化を目指して興した会社だ」(日加R&E)。
土木施工中心のエンジニアリング事業には、ゴムチップ舗装がある。学校や保育園、公園等の遊具の下回り、園庭、テーマパーク、各種商業施設を主なターゲットに展開している。「受注から工事までを担っており、事業は全国展開している。また安心・安全の観点から、カビ洗浄工法もしている」(同)。
同事業での注力製品の一つに、ゴムチップ弾性舗装材「スーパーロードPRO」がある。ゴムチップ材とウレタン樹脂を混ぜ合わせた、柔軟性が高く透水性のある舗装材だ。優れたクッション性を有し、主に歩行用や公園、遊具下マット、人工芝のアンダー材等の用途で使用される。
ラインナップは、①1層(黒ゴムチップまたはカラーゴムチップ1層)②2層(表層にカラーゴムチップ、ベース層に黒ゴムチップやタイヤの廃材をひじき状に粉砕したファイバーゴムチップの2層構造)、さらに③ハイヒックタイプ(表層にカラーゴムチップ、ベース層に特殊軟質ゴムチップの2層構造)といった新商品も上市した。
同製品は「HICにも対応している」(同)と言う。HICとは、「Head Injury Criterion」の略で、衝撃によって頭部(脳)に損傷を与える力の大きさを表す数値。子どもが遊具から転落した際の遊び場の頭部保護基準値等に活用されている。「数値の面でも、安心・安全を担保している。また、軟らかさの度合いは用途に応じ、適切なものを提案。例えば、HIC対応ほど軟らかいと、ハイヒールを履いていると足を挫きやすくなる危険性がある」(同)。
安全で高品質な再生ゴムチップの粉砕から販売まで担う
リサイクリング事業には、工程廃材を粉砕し、再利用まで考えるゴムチップ製造がある。粉砕は同社栃木工場で行っており、新技術や設備への投資も積極的に実施。材料の調達は、「親会社の日加商工の販売先や各ゴム板メーカー、加工メーカー及び自動車ゴム部品メーカー等から発生するゴム端材といった工程廃材を一手に集めてゴムチップ化している」(同)。
現在、栃木工場の生産能力は一直体制で年間1,000トンほど。「材料は古タイヤ以外の工業用ゴム部品の工程廃材と限られているが、良いユーザーに恵まれ、堅調に推移している」(同)。
環境規制などに配慮したゴム板等を使用することで、「例えば発がん性物質が含まれていないことを確認している。安心・安全な、トレーサビリティも確保されたゴムチップのため、様々な公共事業にも使用いただいている」(同)。
同社の黒ゴムチップ舗装は主に、競走馬のトレーニングセンター等の馬が歩く通路や公園の遊歩道、ジョギングロード等に採用されていると言う。「当社のゴムチップ舗装には透水性もあるが、流れ出た水に有害な物質が含まれないといった安心感もある」(同)。
ブーツブランド「HUNTER」とリサイクルパートナーシップ契約を締結
日加R&Eは2022年、英国老舗高級ラバーブーツブランド「HUNTER(ハンター)」とリサイクルパートナーシップ契約を締結した。きっかけは、「イギリス本社でリサイクルの機運が高まっており、日本でも行っていきたいという話があった。そこで企業価値の向上及び持続可能な循環型社会の形成を両社で推進していく、という事でスタートした」(同)。
両社は、HUNTERのブーツを粉砕処理した後に、公園や保育園、幼稚園等のゴムチップ舗装に活用する「ブーツ回収&リサイクルプログラム」を開始。粉砕処理及びゴムチップ舗装を日加R&Eが担っている。
「プログラムを進めるにあたっての課題は、ブーツの金具や靴の内側に張り付けられた裏張りの布等、ゴム以外の素材の分別だった。現在は協力会社と分別し、残ったゴム部分のチップ化を行っている」(同)
HUNTERでは、店舗や本社等に回収ボックスを設置している。ユーザーが、同社の使用済みラバーブーツを持ってくと、割引券やゴムチップをブーツに象ったノベルティ等が配布される。同社は今後、同社店舗ディスプレイや様々なプロジェクトへのゴムチップ活用方法も模索している。
2024年10月から微細粉末ゴム事業に参入
日加R&Eは2024年10月、微粉砕の製造装置を栃木工場へ導入し、微細粉末ゴムの事業に参入する。
同装置の特徴は冷凍粉砕と同等レベルでの粉砕を可能にしたこと。「粉末をより微細にすれば、バージンの生ゴムに練り込みやすくなり、再生ゴム粉末を混ぜ込む割合を増加できる」(同)。
同装置は、設備投資の面でメリットがある。冷凍粉砕装置は、元来価格が高い。高コストの要因には、例えば窒素ガスの保管といった維持・メンテナンスがあるが、同装置はそれが不要となる。一方デメリットは、大量生産には不向きなこと。しかし同社としては十分な生産能力を有するので、問題視はしていない。
「年内に栃木工場で試運転を行い、年明け早々に本稼働していく。当社としてはさらに深化した循環型経済のシステムを組めると期待している」(同)
粉砕したその先を共に考えるパートナシップを築く
同社の粉砕技術が浸透し、「粉砕依頼が増えた。ただ、下処理業者として声を掛けられることも増えてしまった」(同)と言う。「HUNTERの様に、粉砕した先を共に考えてくれるパートナシップを築きながら、リサイクル事業に取り組んでいく」(同)。
ゴム報知新聞版「SUSTAINABLE & RUBBER」は、ゴム業界に関連する国や団体、企業などによる「持続可能な社会の実現」に向けた活動に焦点を当てるシリーズです。なお、弊社ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の掲載内容とは異なります。
ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の詳細はhttps://gomuhouchi.com/other/49351/まで。
-
【シリーズ】SUSTAINABLE & RUB...
鑫永銓(HYC)、台湾最大のコンベヤベルトメーカー―自動化、
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-09-18
-
【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER
アルケマ、高機能とサステナビリティを両立。ヒマシ油使用のバイ
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-09-10
-
【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER
ホッティーポリマー×慶應義塾大学 理工学部 中央試験所、「3
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-08-27
-
【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER
日本ミシュランタイヤ、再生材料の採用加速は「持続可能」実現の
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-08-20
-
【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER
チル・ジャパン、シューズ1足に対し約15杯分のコーヒー粕を再
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-07-29
-
【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER
デンカ、サーキュラーエコノミー推進活動に注力―ポリスチレンケ
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-07-16
-
【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER
日進ゴム、サステナブルスニーカーブランド「RALLY ROU
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-07-02
-
【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER
ランクセス、「サステナブルなタイヤ」製造等に貢献する持続可能
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-06-17
-
【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER
住友ゴム工業、Equity(公平な機会の提供)も重視ー多様性
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-06-04