PAGE TOP

【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER

ホッティーポリマー×慶應義塾大学 理工学部 中央試験所、「3Dプリンターラボ」開設・活用で3Dプリンターを介した研究開発に貢献

SUSTAINABLE&RUBBER 2024-08-27

 ホッティーポリマーが、慶應義塾大学理工学部中央試験所(神奈川県横浜市)に開設した「ホッティーポリマー3Dプリンターラボ」。3Dプリンターを介した技術開発の一層の推進を目的として、ラボには、ホッティーポリマーが所有する4台の3Dプリンターを設置。同大学の教職員や学生らが自由に活用している。ラボ開設をきっかけとする連携活動に何を期待するのか。現況や展望について、ホッティーポリマーと中央試験所、両者に話を聞いた。

ホッティーポリマー3Dプリンターラボ

慶應義塾大学中央試験所に「ホッティーポリマー3Dプリンターラボ」を開設

 ホッティーポリマーは2023年10月に慶應義塾大学理工学部中央試験所と、地域産学官共同研究拠点整備事業に関する契約を締結した。主な目的として、産学官連携による技術開発推進がある。

 中央試験所は、慶應義塾大学理工学部の研究・教育のための設備、また大型分析装置等を集中管理している施設。同学部内すべての教職員と学生に開放されている。高度な技術と熟練を要する装置を除き、利用者自身が操作法を習得し運転を行う、オープンな研究環境で、一部の装置は、学外者にも利用開放されている。

 同年11月、同所内に「ホッティーポリマー3Dプリンターラボ」が開設された。現在ラボ内には、ホッティーポリマーが保有する、造形方式の異なる3Dプリンターが4台設置されている。学生によるラボの利用については、同所内の予約システムで24時間365日、いつでも予約受付が可能だ。

 同社は、既に3Dプリンター事業の拠点として、久喜工場(埼玉県久喜市)内のショールームを保有している。新拠点として、神奈川県にラボを開設したことで、既存拠点への来訪が困難な顧客へのアピールにも繋げていく考えだ。

ホッティーポリマーが所有する4台の3Dプリンターを大学生らが自由に活用

ラボ内の3Dプリンターは学生らが活用している


 3Dプリンターラボには、まず、①LCD光造形方式3DプリンターのSmaPri Sonic(スマプリソニック)4K LL②MEX(FDM)方式3DプリンターのRaise3D Pro3 Plus③MEX(FDM)方式3DプリンターのFUNMAT HT Enhancedといった3台を設置。

 「先行の3台は、既に学生が卒論のために試作を製作するなど、利用実績がある。開設して半年が経ち、稼働状況は今後ますます高まっていく」(中央試験所)

 2024年6月には、4台目としてホッティーポリマー独自開発かつ日本初の純シリコーンゴム3Dプリンター「SILICOM(シリコム)」のデスクトップタイプを導入した。これからの活用が期待される。

 「今後メディカル分野での有効性を示し、医学部での活用や、何か共同研究ができればと考えている。利用者のフィードバックにぜひ期待したい」(ホッティーポリマー)

ホッティーポリマーの3Dプリンター事業における強みに注目

3Dプリンターによる造形物


 髙野朋幸中央試験所主務は2018年、3Dプリンター関連の展示会でホッティーポリマーのブースを訪問。「以来、同社の3Dプリンター事業に注目し続けていた」と話す。そして2020年頃、中央試験所内の企業提供ブースが入れ替わるタイミングで、ホッティーポリマーを推奨し、ラボ開設に至った。

 同社の3Dプリンター事業における強みとして、①同社独自のフィラメント開発技術②小型のモノから、多種多様な3Dプリンターの取扱品目の多さが挙げられる。

 「特にフィラメント、プリンターともに開発技術を保有している点は、研究者の立場において様々なアイデアが出たときに機能しやすいと感じた。双方の相乗効果が期待できると思い、ホッティーポリマーに参画していただいた」(中央試験所)

半自動運転車いす「Feeling」の開発に活用される3Dプリンター

半自動運転車いす「Feeling」


 3Dプリンターラボ活用事例の一つに、半自動運転車いす「Feeling」がある。同製品は、まるで体の一部の様に乗りこなすことを可能にした、ハンズフリーの半自動車いすだ。

 開発しているのは、慶應義塾大学理工学部の研究開発チーム「Humonii」。同チームは、「人と機械の調和により、人の活力を引き出す」ことを使命に活動。専門である知能ロボティクスや人の計測、ハプティクス技術を通じ、人や地域になじみ、調和する形でロボットを社会実装することを目指している。

 「Feelingの部品は、3Dプリンターで製作したものばかりだ。朝考えたものが、夕方には形になる。このトライアル&エラーを何度も繰り返すことができるスピード感は、目を見張るものがある。またホッティーポリマーが取り扱う新素材のフィラメントは、発想が拡がるトリガーとなり得ると考えている」(Humonii)

大学と企業、双方の立場による3Dプリンターラボ活用への期待

 ラボは、開設されてまだ半年余り。これからより一層、積極的に活用されていくことになる。「学生や研究者らにとって、新しいものを生み出す場となってほしい」(中央試験所)。

 またホッティーポリマーとしては、「開発テーマをいただき、チャレンジしていきたい。それが当社の技術力向上や、開発型企業としてのアピールにもつながる。最新鋭のデジタル技術の提供も行い、貢献していきたい」と話す。

 ホッティーポリマーと中央試験所は、ラボが学生にとって積極的かつ有意義に利用できる場で在り続けるよう、努めていく方針だ。また両者は、今後も協力体制を続けていきながら、3Dプリンターを介して自由度の高い研究開発に貢献できるよう、互いに相乗効果が期待できる距離感を保っていく。

ホッティーポリマー
堀田 秀敏 代表取締役社長


慶應義塾大学 理工学部 中央試験所
小向 康夫 事務長


慶應義塾大学 理工学部 中央試験所
髙野 朋幸 主務


Humonii
川崎 陽祐 代表


 ゴム報知新聞版「SUSTAINABLE & RUBBER」は、ゴム業界に関連する国や団体、企業などによる「持続可能な社会の実現」に向けた活動に焦点を当てるシリーズです。なお、弊社ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の掲載内容とは異なります。

 ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の詳細はhttps://gomuhouchi.com/other/49351/まで。

人気連載

  • マーケット
  • ゴム業界の常識
  • 海から考えるカーボンニュートラル
  • つたえること・つたわるもの
  • ベルギー
  • 気になったので聞いてみた
  • とある市場の天然ゴム先物