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【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER

三洋貿易、データベースサイト「CHEMBASE」で環境対応製品を紹介し、普及を促進

SUSTAINABLE&RUBBER 2024-12-10

 BtoB向けデータベースサイト「CHEMBASE(ケムベース)」を運営している三洋貿易。同社の3つの部署が横断的に運営しており、三洋貿易の名前を目立たせず、フラットな姿勢で商材を紹介している。より強くアピールしたい商材は、「取引先と協力して特設ページを作成・設置している」(三洋貿易)という。また2022年4月に設立したサステナビリティ委員会のもと策定した「サステナビリティ基本方針」に基づき、環境負荷低減の観点から見た商材の取り扱い・情報発信にも注力している。今回サイト運営や、掲載している環境対応製品について話を聞いた。

BtoB向けデータベースサイト「CHEMBASE」

発掘した商材をフラットに紹介するデータベースサイト「CHEMBASE」

 「CHEMBASE(ケムベース)」は、2022年4月1日に公開された、ゴム・化学製品を扱うBtoB向けのデータベースサイトだ。各種製品の専門商社である三洋貿易が運営している。同社が発掘した新商材や既存の基幹商材を紹介し、各種製品を探すユーザーと、製品を届けたいメーカーをつなぐことを目的としている。

 「ゴム事業部のほか、化学品事業部、マテリアルソリューション部(ライフサイエンス事業部)と合わせ、3事業部が共に作った。検索機能はもちろん、可能な限り商材情報を詳細に掲載している」(三洋貿易)

 商材情報は、事業部毎の判断で掲載している。社内全体が、同サイトへの掲載に積極的だという。「各事業部の担当者が、推薦している商材を適宜更新している。小回りの利くサイトだと思う。事業部名やサプライヤー名は目立たせず、あくまでフラットに、市場や原材料の種類といったカテゴリー分けで掲載している。より強くアピールしたい商材は、取引先と協力して特設ページを作成・設置している」(同)。

 サイト開設は、他部署同士の連携にも繋がった。「組織自体は縦割りだが、同サイトは横断して使用している。そのため、他事業部の取扱商材がすぐわかり、円滑に話が回ってくることが頻繁にある」(同)。

 同サイトがきっかけの問い合わせも多い。「例えばゴム事業部の場合、掲載内容に対して年間で約300件の問い合わせがある。直接コミュニケーションがなかった自動車メーカーから等、予想外のものもある」(同)。

ゴム・化学製品専門のメディア「CHEMBASE Media」

 また同社は、ケムベースから派生したゴム・化学製品専門のWEBメディア「CHEMBASE Media(ケムベースメディア)」も展開。各種商材情報を掲載した背景を説明するコラム等を載せている。

 「ユーザーの痒い所に手が届くような記事を掲載している。例えば、当社が製品を扱う合成ゴムメーカー・アランセオは日本語サイトが無いため、客観的な視点で情報を載せている。日本語サイトを持っていない海外メーカーについて、当社が第三者目線で冷静に書くことは、優位性があると考えている」(同)

「環境対応製品」の掲載に注力

 三洋貿易はサステナビリティへの取り組みを経営の重要課題と位置付け、①持続可能な国際社会の実現②中長期的な企業成長の両立を目指し、環境負荷低減等の社会課題解決に取り組んでいる。その施策の一環として、市場ニーズに即応した商材を発掘・提供している。

 そこで、現在ケムベースで掲載を強化しているのが、サステナビリティ原材料や天然ベース素材等の「環境対応製品」だ。

もみ殻シリカ


もみ殻シリカの作り方


 例えば、もみ殻を燃やした灰から抽出して作る「もみ殻シリカ」。もみ殻とは米を収穫した後に残る外殻で、農業の副産物として大量発生し、ボイラー等の燃料となる。しかし、その灰には有用な用途が無かった。シリカの原料としてもみ殻灰を使用することで、環境にやさしいサステナブル素材となり、高品質なもみ殻シリカの製造も可能となった。

 「同商材は、当社が出資をして取り組んでいるものだ。Brisil(インド)の製品で、現行の湿式シリカに対し、理論上同じ性能を提供できる。タイヤメーカーでは現行のシリカからもみ殻シリカへ置き換える動きもある。そういった需要に見合った供給体制は世界規模でまだ不十分なので、当社から出資をし、準備を進めている」(同)

 エポキシ化天然ゴム(ENR)もある。天然ゴムは優れた弾性や柔軟性を有す一方、耐熱性や耐寒性、耐オゾン性、耐薬品性、耐候性に課題がある。これらの課題を克服したのがENRで、天然ゴムの二重結合にエポキシ基を導入した変性天然ゴムだ。天然ゴムを原料とするため、石油由来の合成ゴムと比べ環境負荷低減に貢献し得る。「NBRの代替として検討されているほか、これまでと異なる用途で展開されている」(同)。

 アランセオによるバイオ由来EPDM「Keltan Eco」には、①サトウキビ由来のエチレンを用いブラジル工場で生産される「B」②バイオマスナフサのエチレンを用いた「BC」③再生原料を用い、サーキュラーの頭文字を取った「C」の3種類がある。「BCは、ISCC Plus認証(国際持続可能カーボン認証)取得のオランダ工場で、マスバランス方式を用いて生産されている」(同)。

“種蒔き”として、サイト内容の充実を目指す

 今後の目標は、「掲載内容のバリエーションを拡充させ、見応えのあるサイトへ深化させることが第一。ゴムに関して言えば、ゴム薬品を含めて主剤のポリマー、オイルから、サステナブル素材だけでゴム設計ができるくらいラインナップを拡充させたい」(同)。

 同社は今後、生成AIの発展で人々が検索をしなくなる世の中へ進んでいく可能性もあると予想しており、「例えば生成AIが引用するような、正しく充実した情報をアップし続けて、そういった世の中に対応していきたい」(同)という。

 掲載してすぐに効果が表れにくい部分もある。商材の評価から採用、量産までは3~5年は掛かるケースも多い。「まずはユーザーに選択肢を提案する“種蒔き”と捉えて運営したい。ケムベースが基本的な材料の物性値等を伝え、ケムベースメディアの方でそれら商材をさらに補足して紹介していきたい。特設ページにも注力し、当社にとって今がチャンスだと思う商材や、基幹商材の情報を可視化してユーザーへ伝えていく」(同)。

 三洋貿易は両サイト運営を通じ、着実に環境負荷の少ない製品の普及を後押ししていく方針だ。同社は中長期的な視野で、持続可能な社会の実現への貢献を目指す。

ゴム事業部
(中央)執行役員・ゴム事業部長
小宮 康氏
(左)ゴム1部兼ゴム2部部長
渡辺 一郎氏
(右)ゴム1部第2グループ兼事業開発室
  ファインケミカルグループ
森 皓氏


 ゴム報知新聞版「SUSTAINABLE & RUBBER」は、ゴム業界に関連する国や団体、企業などによる「持続可能な社会の実現」に向けた活動に焦点を当てるシリーズです。なお、弊社ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の掲載内容とは異なります。

 ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の詳細はhttps://gomuhouchi.com/other/49351/まで。

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