【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER
日進ゴム、サステナブルスニーカーブランド「RALLY ROUND」を展開―第一弾は竹×天然ゴムのソール使用のスニーカー「PO-JA」
SUSTAINABLE&RUBBER 2024-07-02
日進ゴムが立ち上げたサステナブルスニーカーブランド「RALLY ROUND(ラリーラウンド)」。その第一弾が、スニーカー「PO-JA」だ。同スニーカーは、竹パウダーと天然ゴムによるソール、コーヒーフィルターをアップサイクルして作られた生地、そして天然コルクでできたインソールと、93%が植物由来の素材で構成されている。90年間、シューズやゴム製造で培ってきた技術、そして他社とのコラボレーションも活用しながら同ブランドを展開していく。
アースフレンドリーなシューズを目指すブランド「ラリーラウンド」
シューズメーカー・日進ゴムが発信する新ブランド「RALLY ROUND(ラリーラウンド)」。そのブランド理念は、「とってもアースフレンドリーで楽しく快適なシューズを世界中のマテリアルサプライヤーやコンセプトに共鳴してくれる他のブランドとともにクリエイトする」。同社が90年間、シューズやゴム製品製造によって培ってきたコアテクノロジーとともに、他社の素材やデザインのポテンシャルを引き出すことを目指す。
また同ブランド立ち上げの背景には、技術継承の側面もある。
「日進ゴムの量産型シューズはほぼ海外で生産している。国内生産が減少することで、徐々に当社の靴づくりのノウハウが失われていくのではないかという懸念があった。まだ社内には、1970年代に国内で量産品を担っていた現役の職人が在籍している。彼らの技術を継承していくためにも、会社の未来を担う若い世代を巻き込んでいきたいとサステナブルに主眼を置いたモノづくりに挑戦することにした」(渡邉喜朗日進ゴム取締役営業本部本部長)
日本の竹と天然ゴムによる「バンブラブソール」
「ラリーラウンド」第一弾の商品がスニーカー「PO-JA」だ。同スニーカーのソール素材には、同社が独自開発した「Bambrub(バンブラブ)ソール」を採用している。同ソールは、粉末状になった日本の竹と天然ゴムを合成したもので、「まずサステナブル実現の第一歩として、天然ゴムにカーボンやカルシウム系ではなく、植物系の何かを練り込んでみたいと思った。ススキや籾殻なども試しながら、一番相性が良かった竹に行き着くまで2年ほどの歳月を費やした」(同)という。
竹は粉末状のものを使用しているが、この「竹パウダー」は、竹活用事業や竹パウダー製造販売を展開している松本(岡山県高梁市)が提供している。
「このパウダーを天然ゴムに混ぜてみると、引き裂き強度がしっかりと出た。一方で、比重が非常に軽いので、天然ゴム単体と比べると10%ほど軽量化に貢献してくれる。靴底は耐摩耗性の確保も大事だが、『バンブラブソール』は当社の摩擦基準もクリアした。また、竹そのものが、日本をはじめアジア特有の植物ということも採用理由として大きかった」(同)
コーヒーフィルターをアップサイクルした生地「カフェテックス」
生地も植物由来のモノを採用した。コーヒーフィルターの生産時に発生する廃材をアップサイクルし開発した「Cafetex(カフェテックス)」だ。非常に丈夫で、綿布やポリエステル化学繊維を上回る通気性と、高い速乾性を持つ。
「織布は、神社の狩衣にも用いられる紙布と同じ工程で作られる。コロナ禍による在宅時間の増加で、コーヒーフィルターの需要が高まった。そのタイミングで製造工場を視察する機会があり、何トンも山のように積まれた廃材を見た。コーヒーフィルターは植物由来かつ水にも強い。ラリーラウンドで使ってみたいと思った」(同)
コルクを使用したインソールでストレスフリーな履き心地を
インソールには、ポルトガル産の天然コルクが使用されており、「国内で加工している」(同)。
分厚いインソールだが、クッション性に優れており、軽量となっている。さらに履き込んでいくとユーザーの足に合わせて型取られ、形状を記憶していく。また撥水性も備えており、足裏の汗を吸い込まない。そのため、まるで素足のように履くことができ、ストレスフリーな履き心地を実現するための一助となっている。
「コルクは、ポルトガルの『コルセイロ』というコルク樫の木の皮を剥がす職人の手によるものだ。高級ワインのコルク製作時に余った端材が『PO-JA』のインソールとなっている」(同)
「ラリーラウンド」というプラットフォームを通じ、世界中でコラボレーションしていきたい
「PO-JA」の93%は植物由来の素材が使用されている。この比率をさらに高めていくには、「現在金属素材を採用しているアイレット(靴紐を通す穴に付けるリング状の金具)をバイオマスなプラスチックで代替する等といった可能性がある」(同)。
一方で、「まずは植物由来の比率を高めることを追求し続けるのではなく、製品として世に打ち出していくこと、またそれに伴い当社の方向性を知ってもらうことが重要だと考え、今回の製品化に至った」(同)。
ラリーラウンドのコンセプトは、世界中の人々と手を組み、アースフレンドリーなシューズを作っていくこと。今後の展開の一つとして、エストニアのシューズブランドとのコラボレーションシューズを、2024年秋頃にリリース予定だ。
「今後も様々な国や企業とタッグを組みながら、多種多様な“ラリーラウンド”の靴を制作していきたい。当社としても、セミカスタマイズドのような形で、リクエストがあれば、ゴムの部分も含め柔軟に対応していけたらと思う。ラリーラウンドを一つの“ブランド”ではなく、“プラットフォーム”として認識していただき、ぜひ活用してもらいたい」(同)
同社は、「ラリーラウンド」というプラットフォームを通じ、サステナブルシューズの様々な在り方を探求していく。
ゴム報知新聞版「SUSTAINABLE & RUBBER」は、ゴム業界に関連する国や団体、企業などによる「持続可能な社会の実現」に向けた活動に焦点を当てるシリーズです。なお、弊社ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の掲載内容とは異なります。
ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の詳細はhttps://gomuhouchi.com/other/49351/まで。
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