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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、膠着状態が続く上海ゴム

連載 2017-09-05


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=210円台を中心に明確な方向性を打ち出せない展開が続いた。上海ゴム相場が1トン=1万6,000元台で膠着気味の展開になる中、東京ゴム相場も動意を欠いている。北朝鮮情勢を巡って円相場は比較的大きな値動きを見せたが、為替要因に基づく売買は限定され、上海ゴム相場の次のトレンド形成待ちの地合が続いている。

 国際ゴム相場の関心は上海ゴム相場の値動きの一点に集中しているが、上海ゴム相場は明確な方向性を打ち出せていない。8月下旬は1万6,000元台での膠着相場と化しており、1万6,000元割れで本格的な調整局面入りするのか、1万7,000元台乗せで新たな上昇トレンドを形成するのか、マーケットが明確な判断を下せない状況が続いている。

 中国の他素材市況をみても、鉄鉱石や石炭相場が高値から下押しされるなど、8月下旬はやや調整売り優勢の地合になった。ただ、明確なダウントレンドを形成するまでの勢いはなく、天然ゴム相場は上値が重いながらも下げ渋る中途半端な相場展開になった。

 人民元相場の急伸地合が続く中では、人民元建てゴム相場は一定の底固さを示したとの評価も可能である。しかし、中国素材市況全体が一時的な調整安に留まるか否かの明確な判断指標が存在しないだけに、積極的に売買を仕掛けづらい地合になっている。中国人投資家の瞬間的な投資判断のみに左右される、投機色の強い相場環境が続くことになる。中国素材市況全体における投機マネーの流れに注目したい。

 一方、産地の集荷量は安定している。台風で局地的な天候不順も報告されているが、大規模な洪水被害の発生などは報告されていない。むしろ、潤沢な土壌水分を背景に供給プレッシャーが強くなっている。タイ中央ゴム市場でも特にRSSの集荷が今季最高水準で高止まりしており、増産期型の供給環境が実現している。

 ただ、産地現物相場も完全な膠着相場と化しており、東京ゴム相場に新たな手掛かりを提供することはなかった。潤沢な集荷量を背景に大きく値下りすることも、逆に大きく値上がりすることもなく、東京ゴム相場と同様に専ら上海ゴム相場の動向だけが注目されている。投機マネーの動向に支配された上海ゴム相場の動向に産地相場さえも依存する中、今後も瞬間的な急伸・急落が繰り返される不安定な地合を想定しておく必要がある。

 北朝鮮情勢の緊迫化で海上運賃価格や為替相場も不安化しているが、上海ゴム市場における投機の動きのみに依存した相場展開が続く見通しである。

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