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連載「つたえること・つたわるもの」⑲

森友・加計問題は「斟酌」、米国のご意向「忖度」問題の奈落。

連載 2017-06-28

 下(弱者)から上(強者)に向いたベクトルである「忖度」に対して、「斟酌(酌量)」では上(中央)から下(地方)へのベクトルがはたらく。ことの本質は、当たり前のように繰り返される地元選出議員への陳情、国や地方自治体あてに提出される要望書、請願署名などでは、陳情(請願)相手の行政当局の「忖度」と「斟酌」を期待して行われる「限りなく公益に近い私益」であるが、今回の「忖度」騒動のように安倍晋三・昭恵氏のご意向を独り歩きさせた「限りなく私益に近い公益」をどう見るか、にある。

 ところで、私がとても気になっている「忖度」問題がある。それは、戦後72年間、事実上の植民地でありつづける日本(弱者)から、宗主国であるアメリカ(強者)に向けられる「忖度」のベクトルのことだ。辛口のコラムニストで哲学者の内田樹さんは、昨年7月のブログ『内田樹の研究室』の中で、アメリカ(宗主国=親分)のご意向を「忖度」する日本(植民地=子分)の立ち位置を、次のように分析している。

【日本の指導層はアメリカのご意向を「忖度」する能力の高い人たちで占められている。その能力がないとキャリアが開けないんだから仕方がない。それぞれの持つしかるべき「チャンネル」から、アメリカはこういうことを望んでいるらしいということを聞き出してきて、それをしかるべき筋に注進して、それを物質化できる人間の前にしか今の日本ではキャリアパスが開けない。そういうことです。/ですから、これからあと、アメリカが宗主国としての「後見人」の役を下りた場合に、日本はいったいどうする気なのか。僕には想像がつきません。今の日本には自立的に国防構想や外交構想を立てられる人物がいない。政治家にもいないし、官僚にもいない。どうやってアメリカの意図を忖度するのか、その技術だけを競ってきたわけですから、日本の国益をどうやって最大化するか、そのためにはどういう外交的信頼関係をどこの国と築くべきか、どういうネットワークを構築すべきか、指南力のあるメッセージをどうやって国際社会に向けて発信するか、そういうことを真剣に考えている人間は今の日本の指導層には一人もいない。とりあえず、身体を張ってそういうことを口にして、広く国民に同意を求めるというリスクを冒している人間は一人もいません。】   (『内田樹の研究室』2016年7月22日付ブログ)

 たとえば、2009年の衆議院議員総選挙で「(沖縄の米軍基地)県外移設に県民の気持ちが一つならば、最低でも県外の方向で、われわれも積極的に行動を起こさなければならない」と発言し、民主党の躍進で総理大臣になった鳩山由紀夫氏は、翌2010年4月、当時のオバマ米大統領から普天間基地移設を強く迫られたことなどから、同6月、「国民が聞く耳を持たなくなった」と発言し 自ら総理大臣の職を辞した。

 次に紹介するのは、さきの内田さんが2012年のブログで「忖度」の中身を解説しているくだりである。

【「鳩山がアメリカが機嫌を損なった以上、ホワイトハウスはきっと総理大臣を替えて欲しいと思っているに違いない」と「忖度」して、引きずりおろしたのは日本の政治家と官僚とメディアである。/これは内政干渉ではない。/アメリカとしては、なんか「苦笑い」状態であろう。/何も言わないのに、勝手に「忖度」して、先様の意向をじゃんじゃん実現してくれるのである。/いや~、なんか悪いね。別に頼んでいるわけじゃないのに、勝手にこちらに都合のいいようにあれこれと配慮してくれて。/まあ、頼んでいるわけじゃないから、お礼するという筋でもないけどね。/そんなふうにしてことが進んでいる。/ように見える。】   (『内田樹の研究室』2012年5月9日付ブログ)

 2016年11月、大統領選挙勝利直後のトランプ氏を安倍首相が電撃訪問&ゴルフ外交、2017年1月、アメリカのTTP離脱宣言を面と向かって非難せず、また、同3月に開始された核兵器禁止条約に日本が不参加表明などなど。アメリカのご意向「忖度」問題はいまもなお、アリ地獄のような奈落の底にある。

【プロフィール】
 原山 建郎(はらやま たつろう) 
 出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員

 1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。

 2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。

 おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。

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