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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、通商リスクと円高で下落

連載 2025-03-03

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=360円水準まで軟化し、1月8日以来の安値を更新した。産地減産期入りを手掛かりに2月中旬は380円水準を巡る攻防になっていたが、戻り売り優勢の展開になった。トランプ政権の通商リスクが警戒されたことに加えて、為替が円高に振れたことが嫌気されている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万7,000元台中盤まで下落している。2月中旬には1万8,000元台に乗せる場面もみられたが、同水準を維持できずに反落している。グローバルなリスクオフ傾向が嫌気されている。

 トランプ政権の通商政策は、依然として全容がみえてこない。すでに発動された関税は対中関税のみだが、3月には鉄鋼とアルミ、4月には自動車に対する関税が予定されている。また、4月には相互関税についても具体化していく見通しだ。欧州連合(EU)に対する関税の検討も明らかにされている。カナダとメキシコに対する関税発動は3月5日から4月2日に先送りされたが、連日のように新たな関税策が発表されることに対する警戒感は強い。

 2月20日でトランプ政権が始動してから1カ月が経過したが、マーケットはこれまで通商リスクの本格的な織り込みは見送っていた。先行き不透明感は強いものの、世界経済への影響は軽微との楽観的な見方も強かったためだ。しかし、トランプ政権始動後の経済指標が発表され始める中、米国では消費者マインドの急激な悪化が確認されている。インフレに対する警戒感も強くなっており、「通商リスク」が「景気リスク」に発展し始めたと評価されている。

 米国株が大きく値を崩したほか、WTI原油相場は1バレル=70ドルの節目を割り込み、今年最安値を更新している。非鉄金属相場も需要不安から値を崩し始めており、産業用素材市況全体の地合悪化が、ゴム相場の上値も圧迫している。

 ただし、生産地では減産期が本格化しているため、産地相場は下げ渋っている。タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、2月26日時点で前週比2.1%安の1キロ=72.35バーツとなっているが、ラテックスは逆に同2.3%高になるなど、消費地相場の値下がりとは連動していない。例年、4月に向けてさらに減産圧力が強まる傾向にあるため、需要不安と供給不安の綱引きになっているが、2月末にかけては需要不安の織り込みが優勢になった。

 一方、為替市場では円高圧力が続いており、1ドル=150円の節目を割り込み、148.50~150.00円水準まで下落している。2024年10月11日以来の円高・ドル安環境が、円建てゴム相場の上値を圧迫している。

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