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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、年初は上海ゴム先物が急落

連載 2025-01-13

(マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努)
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=376.50円をピークに年初の取引で急落し、1月7日には2024年11月19日以来の安値となる351.00円まで急落した。しかし、その後は押し目買いが入り、360円台中盤まで切り返す展開になった。為替が円安気味に推移したことはポジティブ。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万7,000元台後半から1月7日の1万6,370元まで急落し、2024年9月6日以来の安値を更新している。その後は1万6,000元台後半まで切り返しているが、年初から大きく値位置を切り下げている。

 2025年の取引開始と同時に、上海ゴム相場は急落した。中国市場では、鉄鉱石や石炭相場なども急落しており、年初は中国経済のリスク織り込みが優先された。上海ゴム相場もこの流れの中で大きく値位置を切り下げている。

 中国国営メディア新華社通信は12月31日、習近平国家主席が2025年は「より積極的で有為な政策を実施」する方針を示したと報じた。年頭あいさつにおいて、「質の高い発展」に強い意欲を示している。3月の全国人民代表大会(全人代)でより積極的な財政出動などの景気対策期待を高める発言といえる。実際に原油相場はこうした習近平国家主席の発言を手掛かりに上昇したが、上海ゴム相場は急落している。なにか中国の素材市場に限定されたネガティブ材料が浮上したわけではないが、中国株も年初から急落しており、中国経済リスクの織り込みが最優先された。

 ゴムの独自材料としては、1月28日から春節の連休を控えており、タイヤ工場などの稼働が抑制されやすい季節環境がネガティブ材料視されている。また、青島などのゴム在庫が増加しているとの報告が目立つこともネガティブ。さらに中国では呼吸器感染症が流行していることへの警戒感も高まっている。

 一方、産地相場も値下がりしている。タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、2024年末の1キロ=70.18バーツに対して、1月8日時点では67.31バーツまで下落。東南アジアでは豪雨傾向が徐々に緩んでおり、天候リスクが緩和しているとの評価が優勢になっている。価格低下でも値位置は依然として高く、実需の値ごろ買い、農家の売り渋りといった動きも確認できていない。今後は徐々にウインタリング(落葉期)の減産シーズンに移行するが、季節要因による下値サポートの動きは鈍かった。上海ゴム主導の値下がりに、産地相場がブレーキを掛けるような動きは確認できなかった。ただし、JPXゴム相場は期近2限月にプレミアムが加算された逆サヤ(期近高・期先安)環境を維持した。

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