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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、急激な円高で戻売り優勢

連載 2017-05-25

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=234.10円まで急伸した後、210円台中盤まで急反落する荒れた相場展開になった。

 上海ゴム相場の下げ一服や円安、更には当限で踏み上げ的な動きが観測される中、4月11日以来の高値を更新した。しかし、その後は米国の政治的な混乱を背景とした急激な円高、更には上海ゴム相場が再び軟化したことが嫌気され、戻り売り優勢の展開に回帰しつつある。

 米国では、トランプ大統領とロシアとの関係について様々な疑惑が浮上しており、大統領弾劾も含めた混乱状況が報告されている。今後の捜査状況によっては大統領就任から4カ月を経過したばかりにもかかわらず退任を迫られる可能性もあり、金融市場でも大きな混乱が報告されている。

 天然ゴム需給に対しては直接的な影響が殆どない動きだが、為替市場で急激な円高・ドル安圧力が発生する中、円建てゴム相場に対しては為替要因から下押し圧力が強まりやすくなっている。

 東京市場で警戒されたのは当限で踏み上げ相場的な急伸がみられたことだが、既に取組高の調整は一巡しており、当限主導で急伸するリスクも限定的とみている。産地では集荷量の改善傾向が見受けられ、減産期明けが強くイメージされ始めていることもネガティブである。まだ、通常の集荷環境に回帰したとまでは言えないが、乾季から雨季への転換に伴い、天然ゴムも減産期から生産期への着実な移行が報告されており、産地供給要因で急伸するリスクも限定される。

 これまで減産期入りに伴うプレミアムを加算してきた相場ではないため、特に減産期明けで大きく売り込まれる必要性は乏しい。ただ、このまま産地集荷環境も安定すれば、短期需給要因でも下振れリスクが高まろう。

 引き続き注目されるのは上海ゴム市場における投機マネーの動向になるが、当局の金融引き締め的な傾向に目立った変化はみられず、天然ゴム市場に対して改めて投機マネーが流入するハードルも高い。ここにきて、貿易や製造業などの指標では、金融引き締めに伴う実体経済減速の兆候も報告されており、上海ゴム相場は戻り売り優勢の地合が続きやすい。

 中国の投機要因でゴム相場を再び押し上げるのが困難な状況が続いている以上は、生産国の安値限界を打診する展開が続きやすい。しかし、現在の価格水準では農家の抗議デモと言った動きは報告されておらず、東京ゴムは自律反発をこなしながら、改めて200円割れを打診しやすい環境にある。

 (マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努)

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