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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、安値圏で低迷状態が続く

連載 2023-07-10

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円台中盤で揉み合う展開になった。世界経済の減速懸念を背景に7月5日安値は203.00円となり、3月22日以来の安値を更新した。しかし、年初来安値201.90円を下抜くまでの勢いはみられず、前週比ではほぼ横ばいの展開に留まった。為替市場で急激な円安が一服したことはネガティブ。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万1,000元台後半での保ち合い相場から、1万2,000元台前半まで値位置を切り上げた。一時は3月6日以来の高値を更新している。

 中国経済の減速懸念は維持されている。財新の6月製造業PMIは前月の50.9から50.5、サービス業PMIは同57.1から53.9までそれぞれ悪化している。中国経済の減速傾向が再確認されていることはネガティブ。

 一方、その影響で人民元安傾向が維持されていることは、人民元建ての上海ゴム相場に対してポジティブ。また、景気減速傾向が一段と鮮明になる中、中国政府が景気対策を打ち出すのではないかとの観測が浮上していることもゴム相場を下支えした。

 中国コモディティ市場全体では鉄鉱石や銅相場が強含む一方、石炭相場が軟化するなど、強弱評価が割れている。上海株式相場も不安定な値動きに留まった。しかし上海ゴム相場に関しては、明確な売買材料が見当たらないものの底固さが目立った。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、7月6日時点でUSSが前週比0.8%高の1キロ=46.16バーツ、RSSが同0.1%安の47.27バーツ。産地相場の値下がり傾向は一服したが今年最安値圏を維持している。引き続き集荷量は安定しており、それが産地相場の上値を圧迫する展開が維持されている。

 消費地が当限主導で値を崩すような動きまではみられなかったが、消費地相場の値動きとは関係なく一貫して安値低迷状態が続いている。JPXゴム相場も当限は200円の節目を挟んだ安値低迷状態が続いた。

 異常気象「エルニーニョ現象」が発生しているため、世界の天候は不安定化している。米国立環境予測センター(NCEP)のデータだと、7月3日の世界平均気温は過去最高を更新している。

 現時点で天然ゴムの生産・集荷環境に直接的なインパクトは確認できていないが、タイ気象当局からは関係部局に対してエルニーニョ現象の影響が出始めており、対応を進めるように注意喚起を行っている。このまま安定した集荷環境の上値圧迫が続くのか、天候リスクが具体化して産地相場発の値上がり圧力がみられるのかが注目されている。

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