【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、需要不安と産地安が圧迫
連載 2023-07-03
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円台中盤で上値の重い展開になった。4月11日以来の安値を更新している。引き続き中国経済の減速懸念が強いことに加えて、米欧中央銀行の利上げスタンスの強さも警戒されている。さらに産地相場が値下がり傾向を維持したこともネガティブ。為替は円安傾向を維持したが、上値の重さが目立った。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万1,000元台後半で上値の重い展開になった。端午節の4連休明け後の取引になったが、1万2,000元台を維持できなかった。端午節の旅行者数は前年比32.3%増と推計されているが、5月の労働節の同70.8%増から伸びが鈍化したことが嫌気されている。また、1~5月期の中国工業企業利益が前年同期比18.8%減と大きく落ち込んだことはネガティブ。内需に加えて外需の低迷も鮮明になっている。ゼロコロナ政策が終了したものの、企業は需要鈍化で利益率が圧迫されている。ただし、中国経済の減速懸念が逆に中国政府の景気対策を促すとの楽観的な見方もあり、上海ゴム相場は上値を抑えられたものの、本格的な値崩れには至らなかった。
中国の李強首相は、今年の中国経済は政府の成長目標(5%前後)を達成できるとの見通しを示した。しかし、これは成長目標を達成するために大規模な景気対策を展開する必要性を否定するものと評価される。
一方、中国政府は電気自動車(EV)など新エネルギー車の自動車取得税の減税措置の期限を今年末から2027年末まで延長すると発表した。景気対策と産業政策を兼ねたものだが、これによってEVの販売が向上すれば、新車用タイヤ需要が刺激される可能性がある。ただし、ゴム市場では短期の需要刺激効果は限定的との慎重な見方が優勢だった。
6月中旬以降は産地相場の値下がり傾向が強くなっていることもネガティブ。タイ中央ゴム市場のRSS現物相場は、6月29日時点で前週比1.2%安の1キロ=47.47バーツとなっている。減産期から生産期への移行が順調に進んでおり、集荷量が高水準を維持している。異常気象「エルニーニョ現象」の発生で高温や乾燥傾向が強まるとの懸念もあるが、足元では特に問題がない降水量が確認されている。改めて乾燥懸念が強まると供給不安から急伸するリスクも抱えているが、足元ではそれ以上に減産期明け後の集荷量の増加が産地相場を押し下げる動きの方が目立っている。これが消費地相場も押し下げる要因になっている。
明確なポジティブ材料としては、円安環境が続いていることがある。ただ、政府が円買い介入に踏み切るリスクには注意が必要。
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