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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中国経済への不信で軟調

連載 2022-09-05

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=210円台後半まで下落する展開になった。8月は220円台で薄商いの膠着気味の展開が続いていたが、9月入り後に改めて急落地合を形成している。中国経済の減速リスクを織り込む動きが優勢になっている。為替が大きく円安に振れていることはポジティブだが、昨年10月8日以来の安値を更新している。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台中盤まで下落した。中国では新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)の動きが広がりを見せており、経済活動への影響が強く警戒されている。深セン、大連、成都などで、一斉にロックダウンが始まっている。7~8月は経済活動の正常化を優先するような動きもみられたが、10月16日に中国共産党大会の開幕が決まった影響か、ゼロコロナ政策に基づく行動規制強化の動きが目立つ。

 必ずしも新規感染者数が急増しない状況でもロックダウンの導入が一斉に行われていることで、マーケットでは他の主要都市にもロックダウンが広がりを見せ、中国経済活動に対する制約が強まるのではないかとの警戒感が広がっている。天然ゴム以外に、鉄鉱石、石炭、銅、そして原油相場なども需要不安を織り込む形で上値の重い展開になっている。

 一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、9月1日時点でUSSが前週比2.7%安の1キロ=46.86バーツ、RSSが同4.0%安の48.00バーツ。改めて年初来安値を更新しているが、集荷量の落ち込みなどは確認できず、逆にUSSの集荷量は増加傾向にある。世界的には干ばつ被害が農産物生産に与える影響が警戒されているが、天然ゴムの生産地では大きな天候障害は報告されていない。タイ北部など一部で豪雨による洪水被害も報告されているが、供給リスクを織り込むような必要性は認められていない。産地がどこまで安値を許容するのかも重要になっている。

 8月26日にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が講演を行い、インフレ鎮静化のための強力な引き締めスタンスを示したことが、株価急落を促している。ハイペースな利上げに実体経済が耐えられるのか不透明感が強いが、議長はインフレ鎮静化が最優先されるため、「痛み」の発生を警告している。これもゴム需要に対しては下振れ要因になるが、米長短金利上昇を受けて為替市場で円相場が急落しているため、円建てゴム相場に対しては逆に為替要因で買いを入れるような動きも観測された。ただ、円安よりも主に中国の需要不安を織り込む動きが優勢になる中、上海ゴム相場と同様にJPXゴム相場も改めて下値を切り下げる展開になった。

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