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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム相場の2月後半のレビューと3月前半のアウトルック

連載 2017-02-28



マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

2月後半のレビュー

 2月下旬のTOCOM天然ゴム先物相場(期先)は急落する展開になった。1月31日の1㎏=366.70円をピークに2月7日の293.10円まで急落した後、2月14日の328.00円まで急反発していた。しかし、2月下旬に入ると上海ゴム相場主導で値崩れを起こし、2月24日安値は262.50円に達している。上海ゴム相場は2月15日に今年最高値となる1トン=2万2,310元を付けていたが、月末には1万8,000元台までコアレンジを切り下げる展開になっている。東京ゴム相場は1月4日以来、上海ゴム相場は1月9日以来の安値を更新している。

 相変わらず投機マネーの動向に支配された上海ゴム相場主導の展開になっており、瞬時に地合が一変する不安定な相場環境が続いている。米国でトランプ政権が誕生して以降、為替市場では人民元安の動きにブレーキが掛かっており、為替要因で上海の人民元建てゴム相場が大きく変動する必要性は乏しくなっている。それでも2月中旬には上海ゴム市場に対する投機マネーの流入傾向が目立ったが、足元ではその流れが逆転していることが東京ゴム相場も大きく下押ししている。

 背景としては、ビットコイン相場に対する投機マネーのシフトが発生している影響がありそうだ。2月中旬には中国政府がビットコイン規制を強化する動きを見せていたが、ビットコイン相場は一時的に急落したものの、2月末には逆に過去最高値を更新する展開になっている。中国国内では、人民元安に対して根強い警戒感があり、割高感・過熱感の出てきたコモディティ市場から資金を引き揚げ、ビットコイン相場に資金を移動させている可能性が高い。

 一方、需給面では目立った動きはみられない。タイ政府は2月14日に9万6,000トンの政府在庫入札を行い、3月7日にも更に12万トンの入札を行うと発表している。この入札で中国系ディーラーが多く受けたことが上海ゴム相場を押し下げているとの指摘もあるが、産地相場は専ら上海や東京ゴム相場の値動きをトレースしているのみであり、産地の需給動向は余り材料視されていない。生産地では豪雨・洪水被害からの復旧が進む一方で、今後は乾季に伴う減産期入りを迎えることになり、ゴム相場に対する影響としては強弱評価が交錯している。

3月前半のアウトルック

 3月上旬のゴム相場は、引き続き投機色の強い上海ゴム相場の動向に左右されることになる。ただ、その上海ゴム相場が中国投資家の「マインド」という不確実性の強い指標に左右されている以上、これまでと同様にボラティリティの高い相場展開を想定しておく必要がある。

 数少ない判断指標となるのが、ビットコイン相場の動向である。人民元相場に目立った動きがみられない中でビットコイン相場が急騰しているが、そのビットコイン投資の原資の一部はコモディティ市場からの資金引き揚げである可能性が高い。このため、ビットコイン相場の高騰が続いている間は、上海ゴム相場も意味なく急落するリスクを想定しておく必要がある。

 一方で、ビットコイン相場の高騰には中国当局が神経を尖らせており、改めて投機規制の動きなどがみられると、「上海ゴム相場→ビットコイン相場」の資金の流れが「ビットコイン相場→上海ゴム相場」に転換する可能性がある。また、1月下旬以降の人民元相場は膠着状態に陥っているが、人民元安再開の動きがみられれば、改めて上海ゴム相場に対する投機マネー流入が加速する可能性も十分にある。

 中国国内では富裕層を中心に人民元からの逃げ道を探る動きが活発化しており、ビットコインとコモディティ市場の間を投機マネーが行き来する不安定な地合が続きやすい。鉄鉱石や石炭相場なども不安定化しており、いずれのマーケットも投機マネーの瞬間的な動きに翻弄されている。

 需給面では、減産シーズンに向かうため、季節要因からの支援が得られやすくなる。一方で、タイ政府はこのタイミングで政府在庫の追加放出を進める計画であり、強弱材料が交錯している。大きな流れとしては、ゴム相場の上昇トレンドそのものが崩れたのかは疑問視しているが、ゴムの需給動向よりも中国投資環境に強く依存した相場環境が続いているだけに、荒れた相場展開が続きやすい。2月下旬はビットコインに投資人気を奪われたが、ゴム市場に対する資金回帰がみられるか否かが、3月上旬のゴム価格水準を決定づけることになる。

【レンジ】
2月後半の取引レンジ 262.50~320.00円
3月前半の予想レンジ 235.00~320.00円

【プロフィール】
小菅 努(こすげ つとむ) マーケットエッジ株式会社 代表取締役

 1976年千葉県生まれ。筑波大学卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。コモディティ市場や金融市場の調査・研究・分析業務に従事。商品アナリスト・東京商品取引所認定(貴金属、石油、ゴム、農産物)

http://www.marketedge.co.jp/
https://twitter.com/kosuge_tsutomu

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