連載コラム「白耳義通信 」65
「公共料金値上げ」
連載 2022-02-24
鍵盤楽器奏者 末次 克史
冬季オリンピック北京大会が終わりました。開会式の選手団入場では、ベルギーは10番目で、日本の一つ前でした。日本語の漢字によるベルギーの当て字は、このコラムのタイトルにもなっているように「白耳義」。しかし中国語では「比利时」と書くと、初めて知りました。
今回の北京大会で、ベルギーは男子マススタートでバルト・スイングス選手 Bart Swings が金メダル。女子ショートトラック 1000m でハヌ・デスメット選手 Hanne Desmet が銅メダルを獲得。バルト・スイングス選手は、冬季オリンピック大会に於いて、ベルギーに初めて金メダルをもたらしました。
スイングス選手は、インラインスケートもこなす二刀流。ベルギーは山がないせいか、ウインタースポーツがそれほど盛んではありません。同じように山がないオランダではスピードスケートが盛んではないかと思われるかもしれませんが、オランダのように、運河や川が凍って、スケートをしながら出勤したり、休みになるとスケートを楽しむ環境が整っているわけでもありません。
せいぜいクリスマスマーケットで設置されている、スケートリンクで滑りを楽しむくらいでしょうか。
このように練習環境に恵まれないベルギーのスケート選手は、隣国オランダへ修行に行って研鑽を積むわけですが、スイングス選手はそれに加え、氷のない環境でも滑りを楽しんでいることが、好結果に繋がったようにも思います。
そんな明るい話題に湧いたベルギーですが、庶民は年が明けて多くの人が公共料金の値上げに頭を悩まされています。ベルギーの電気、ガス、水道代は、前年の合計を12で割ったものが、翌年の基準になります。ですので、前々年より多く使用していれば、追加料金を徴収されますし、少なければ還付されます。
電気やガス、水道のメーターがデジタル化されることや、エネルギー対策で、公共料金が軒並み値上げされたことで、前々年より少ない使用量にも関わらず、追加料金を徴収される事態となっています。平均で600ユーロ(約78,000円)。一軒家では3,000ユーロ(約390,000円)追加徴収された家もあるとか。庶民とっては大打撃。
ロシアとウクライナの緊張によって、ガスはどうなるのか。2030年までの温室効果ガス55%削減による市民への影響は? それに加え、未だ収束の気配のない新型コロナウィルス。先行きが見えない閉塞感に包まれているベルギーです。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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