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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海ゴム主導でじり高

連載 2022-01-17

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=240円水準での保ち合いを経て、240円台中盤から後半まで小幅上昇する展開になった。年末・年始を挟んではリスクオン環境、円安、原油高などを背景に買いが膨らんだが、米国で早期利上げ観測が強まると金融市場が不安定化し、ゴム相場も上げ一服となった。しかし、大きな値崩れには至らず、その後は上海ゴム相場の堅調地合を背景に、小幅ながら上値を切り上げる展開になっている。2021年12月2日以来の高値を更新している。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元台中盤から後半で揉み合う展開になった後、1万5,000元の節目を上抜く展開になった。2021年12月2日以来の高値を更新している。

 中国でも「オミクロン株」の感染が拡大しているが、政府の景気刺激策の効果もあって、実体経済に対する見通しが改善している。非鉄金属や鉄鉱石なども底固い展開になっており、この流れでゴム相場に対しても買いが膨らんだ。

 中国汽車工業協会は、2021年の新車販売台数が前年比3.8%増の2,627万台に達したと発表した。前年比プラスは4年ぶりのことになる。また、2022年の新車販売台数は5.4%増の2,750万台になるとの見通しも示されている。電気自動車(EV)の新モデル投入が相次いでいる一方、半導体供給不足などサプライチェーンの問題が解消傾向にあるなか、タイヤ需要の伸びも期待されやすい環境にある。

 EVシフトの動きはコモディティ需要環境に大きな不確実性をもたらしているが、タイヤ用ゴム需要環境に関しては大きな影響を受けないとみられ、自動車市場全体の改善傾向・見通しが素直に好感されている。

 一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、1月13日時点でUSSが前週比0.8%高の1キロ=55.05バーツ、RSSが同2.3%高の59.32バーツとなっている。消費地相場の底固さを受けて、産地相場も値上がりしている。

 産地ではラニーニャ現象の影響で豪雨や洪水報告があり、「オミクロン株」の影響で農業部門の人手不足も指摘されている。このため、パーム油やコーヒーなどが供給リスクを織り込む動きを見せているが、ゴム相場に関しては産地主導の値上がりは見られなかった。集荷量が安定していることもあり、もっぱらリスク投資全体の地合に依存する展開になっている。ゴム需給環境に関しては、必ずしも重要視されていない。

 為替市場で円安圧力が一服したことで、為替要因での値上がり圧力に関しては一服している。このため値動きは鈍化傾向にあるが、底固さは維持されている。

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