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連載コラム「白耳義通信」⑤

「着物の遺伝子」

2017-02-15

鍵盤楽器奏者 末次克史

 ベルギー(ヨーロッパ)で街を歩いているアジア人を遠くから見ても、その人が日本人かどうか当てる自信がある。立ち止まっていたり、座っていたら分かりにくいが、歩いているところを見ると、他のアジアの人とは歩き方が違うからだ。日本人特有の歩き方がある。

 それは「摺り足」。日本人はこのタイプの人が多い。自分も気を付けていないと、摺り足気味に歩いていることがあり、このように歩いていると靴のかかとの減り方が早いように思う。

 特に建物の中で「摺り足」で踵から着地するように音を立てながら歩かれると異常に気になる。しかし日本にいる時は、余り気にならないのは不思議だ。日本にいる時、麺をすする音が気にならないのと同じ原理が働いているのだろうか。

 ある時、日本人女性が歩いているのを見たベルギー人が、「あなた疲れているの?」と言っているのを耳にしたことがある。こちらの人にはダラダラとゆっくり歩いていると、こんな見方をされることがあるんだと知った。

 子供の時、父親がスリッパを「パタパタ」と音を立てながら歩く姿を真似していたときがある。「これが大人の歩き方なんだ」と思ったかどうか今となっては忘れてしまったが、「子供は親の背中を見て育つ」というように、こうやって自然と受け継がれていくものかも知れない。

 何故、日本人には「摺り足」が多いのか。やはり着物を着て生活していたことが大きいと思っている。着物では欧米人のように踵を跳ね上げた歩き方では美しさがでない。下駄を履いて「カランコロン」と音を立てながら歩くのは粋だったりする。

 洋服が一般的になって未だ100年も経っていないのだから、名残があってもおかしくはない。着物の DNA が成せる業ではないだろうか。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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