【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、変異株の脅威が上値圧迫
連載 2021-12-06
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、RSSが1キロ=257.70円まで上昇した後、240円台前半まで反落する展開になった。中国経済に対する信頼感が回復したことで、鉄鉱石や非鉄金属相場の上昇と歩調を合わせ、11月25日には5月28日以来の高値を更新していた。チャート主導の買いも膨らんだ模様だ。しかし、同日に南アフリカで新型コロナウイルスの新しい変異株「オミクロン」の発生が報告されると、投資家のリスク選好性が一気に後退し、株価やコモディティ価格急落の流れの中で、ゴム相場も大きく下押しされている。
上海ゴム先物相場も11月25日に1トン=1万5,810元まで上昇した後、1万5,000元の節目水準まで軟化している。「オミクロン」の脅威に対して敏感に反応している。
新型コロナはこれまで多くの変異株を発生させてきたが、新たな変異株「オミクロン」については、まだ評価が定まっていない。ワクチンや治療薬の有効性、感染力や重症化・死亡リスクなどの調査には時間が必要な状況にある。このため、世界経済に対しても深刻な脅威に発展する可能性を想定しておく必要があり、マーケット環境は一気に不安定化している。
製薬メーカーは、仮にワクチンの効果が低下しても、早期に「オミクロン」に対応したワクチンの提供は可能との見通しを示している。このため、昨年のようなパニック状態に陥ることはないとの見方が優勢だが、実際には分からないことが多いだけに、景気見通しに対する深刻な脅威に発展する可能性も想定せざるを得ない状況になっている。原油を筆頭にコモディティ価格も全般的に乱高下が繰り返される不安定な地合になっており、ゴム相場もしばらくは「オミクロン」を巡るヘッドラインに一喜一憂する不安定な地合が続く可能性が高まっている。
供給環境は、依然として厳しい状態が続いている。東南アジア全域の豪雨、労働力不足の影響もあって、タイ中央ゴム市場でもUSSに続いてRSSの集荷も落ち込んでいる。ただ、産地主導で価格上昇を打診するような動きは見られず、もっぱら消費地相場における投機マネーの動向に依存した展開になっている。11月30日時点の現物相場は、USSが前週比2.1%安の1キロ=57.26バーツ、RSSが同0.5%高の61.55バーツ。
一方、需要サイドでは自動車生産環境の改善による新車用タイヤ需要の回復期待も強い。半導体不足の影響が徐々に緩和されており、先行き不透明感が後退している。ただ、供給サイドと同様に、需要サイドの動向もマーケットではあまり重視されていない。投資環境全体の地合に左右されている。
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