【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、急伸一服も高止まりが続く
連載 2021-10-18
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、RSSが1キロ=220~230円水準で揉み合う展開になった。原油相場の急伸や円安を背景にゴム相場も急伸し、10月8日には6月30日以来の高値となる233.10円まで値上がりしていた。しかし、その後は短期的な過熱感から調整売りが上値を抑え、上げ一服となっている。一方で、本格的に戻りを売り込むような動きまではみられず、最近の高値圏で保合気味の展開になっている。
上海ゴム先物相場は、国慶節の連休明け後に買い圧力が強まり、10月12日には一時1トン=1万5,000元台に乗せた。9月下旬の1万3,000元台前半から急ピッチな上昇が続いていたが、その後は1万4,000元台中盤で方向性を欠いている。上げ一服ながらも、高値水準を維持している。
9月下旬以降は原油相場連動で急伸地合を形成していた。近年は必ずしも原油とゴム相場との間に強い連動性は認められない傾向が強くなっていたが、原油相場のボラティリティが急激に高まる中、ゴム相場の安値修正を促すきっかけになっている。一応は合成ゴム価格の値上がり要因、インフレ懸念の高まりなどが天然ゴム相場も押し上げると解説されることが多いが、単純につれ高している模様だ。このため、原油相場の高騰が更に続くか否かが重視されている。
しかも、為替市場では円安傾向が強くなっているため、特に円建てゴム相場に対しては値上がり圧力が強まりやすくなっている。更に円安が進むか否かも注目度が高い。
一方で、原油相場連動で急伸しているのは期中から期先限月が中心であり、期近限月の上げ幅は相対的に限定された。このため、当先の順サヤ(期近安・期先高)傾向は強化されており、原油主導の高騰には投機色が強い。
国際通貨基金(IMF)は最新の世界経済見通し(WEO)において、今年の世界経済成長率を7月時点から0.1%引き下げた。また、世界経済の「リスクは拡大した」との見方も示している。米国、ドイツ、日本、中国など主要国の成長見通しがいずれも引き下げられているが、ゴム相場に対する影響は限定的だった。中国やインドなどでは停電による経済活動の混乱も報告されているが、ゴム相場は需要不安の織り込みを見送っている。
タイ中央ゴム市場の現物相場は、10月14日時点でUSSが前週比4.5%高の1キロ=52.57バーツ、RSSが同2.4%高の55.12バーツ。原油主導で消費地相場の値上がりが進む中、産地相場もつれ高している。台風シーズンながらも供給環境は安定しており、消費地主導の価格形成は見送られた状態が続いている。
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