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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、高値更新後に反落で不安定

連載 2021-08-23

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=230.20円まで上昇して6月30日以来の高値を更新した後、220円台前半まで急反落する不安定な値動きになった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台後半をコアに高止まりした。一時1万5,000元台を回復した後、1万4,000元台中盤まで急反落するなど、荒れた展開ながら、方向性が定まらなかった。

 コモディティ市場全体を見渡すと、新型コロナウイルスの感染被害拡大、中国経済の減速懸念などを背景に、原油や銅、鉄鉱石など産業用素材市況が軒並み下落している。日本でも厳しい感染状況が連日のように報告されているが、中国や米国といったゴムの主要消費国でも感染被害が再拡大しており、ワクチン接種で日常生活に回帰できるとの見通しに不確実性が高まっている。

 当然、ゴム需要環境に対してもネガティブな動きと言えるが、ゴム相場は他コモディティ相場に逆行高となって連日のように戻り高値を更新した後、19日の取引では突然に連動安になるなど、方向性が定まっていない。このまま他コモディティとの連動性を高める形で軟化するのか、投機的な買いで改めて上値切り上げを試すのかが問われる。

 中国の7月小売売上高は前年同月比8.5%増(前月は前年同月比12.1%増)、7月鉱工業生産は同6.4%増(前月は同8.3%増)となった。原材料価格の高騰、サプライチェーンの混乱、新型コロナの感染拡大などが、中国経済成長の鈍化を促していると評価されていることはネガティブ。

 また、トヨタ自動車が9月の世界生産を当初計画から4割削減すると報じられている。半導体や部品調達の停滞を受けて、自動車生産の制約が一段と強くなっていることが窺える。ゴムに関しては、買い換え用市場が好調なことで大きな影響はないとの見方もあるが、自動車関連素材市況に対して下押し圧力が強まる中、投資家マインドの悪化には注意が求められる状況になっている。

 一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、8月19日時点でUSSが前週比2.8%高の54.11バーツ、RSSが同3.3%高の57.75バーツ。タイ産の集荷量には特に目立った障害は確認できず、集荷量は安定している。ただ、東南アジア全域で新型コロナの感染被害が拡大していることで、一部農産物のサプライチェーンには混乱が報告されており、高めの緊張感が維持されている。ただ、JPXゴム先物相場では順サヤ(期近安・期先高)傾向が続いており、産地主導で期近限月に対してプレミアムを加算し、それでゴム相場全体の水準を切り上げていくような動きは確認できていない。

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