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連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」(29)

日本国民1人当たり毎年タイヤ1本が生産されている

連載 2021-07-05

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一

 日本ゴム工業会の資料によると、2020年にはタイヤが1億2,129万本生産されました。2020年は新型コロナウイルスの影響で、自動車生産台数が減ったので近年では少ない数字です。

 2019年は1億4,709万本、2018年は1億4,730万本でした。日本の人口が1億2,500万人ぐらいですから、国民一人当たり、毎年1本以上のタイヤが生産されていることになります。結構すごい数だと思います。

 大人も子供もいれて、毎年一人1本タイヤを使うでしょうか? 平均3人家族として、毎年3本のタイヤを買うか? そんなことはないと思います。

 日本の4輪自動車(乗用車、商業車)の生産台数は、2020年は806万台、2輪車(オートバイ、スクーター)の生産は48万台ぐらいでした。最近の自動車では乗用車にはスペアーなしが多いので1台4本のタイヤがついています。大型トラックはタイヤ6本以上ついているケースもありますが、とりあえず車1台にタイヤ4本、2輪車にタイヤ2本して、新車に装着されるタイヤは1年間で806×4+48×2=3,320万本のタイヤが新車用に使用されていることになります。

 日本で生産されるタイヤのだいたい30%ぐらいが輸出されています。2020年の輸出本数は3,509万本でした。一方タイヤの輸入もあります。通関統計によると2020年のタイヤの輸入本数は2,549万本でした。これらを考えると、日本の市場では、タイヤのメーカー在庫量、販売店での在庫量が変わらないとすれば、7,849万本のタイヤが新車用以外に使われたことになります。この分は交換、取り換え用タイヤです。

 2020年の日本の自動車(乗用車、トラック、2輪車含む)の保有台数が8,185万台でした。仮に1台の自動車に4本のタイヤがついているとすれば、8,185万台×4本=3億2,740万本のタイヤが日本に現存する車に装着されていて、2020年は7,849万本のタイヤが交換されたとして、車としては平均4.2年で一回タイヤ交換がされたことになります。もちろん交換頻度が高いトラック、バスもあり、ほとんど走らない車もありますので、厳密なことは言えませんが、4年に一回タイヤを交換するというのも、なんだか納得できます。

 日本自動車タイヤ協会ではもっと詳しい統計を発表しています。それによると、2020年は新車用のタイヤ販売本数は3,778万本でした。トラックバスもあるので、上の計算よりもっと多かったようです。交換用のタイヤ販売は6,487万本でした。この数字で計算すると2020年では平均5.0年に一回タイヤを交換する計算になります。2019年では平均4.5年で交換でしたので、コロナ禍でタイヤ交換回数が減ったのでしょう。

 タイヤの輸入はどの国からが多いのでしょう。米国? 韓国? 1位は中国からで2020年は870万本、2位はタイからで501万本、3位がインドネシアからで481万本、4位は台湾からで202万本、5位がベトナムから129万本です。この中で気になる数字は、中国とタイからの大型トラックタイヤ、インドネシアからの小型トラックタイヤ、そして中国、ベトナム、タイ、インドネシアからの乗用車タイヤ、タイからのオートバイタイヤ、インドネシアからのその他のタイヤ輸入が多いことです。お気づきの方がいらっしゃると思いますが、この内かなりの部分は日系タイヤ会社のアジア工場からの輸入品だと思われます。その他のタイヤとは建機用タイヤかもしれません。

 米国からのタイヤ輸入は19万本と比較的少ない。GOODYEAR社のタイヤは確か日本の某社がOEM生産していました。フランス、ドイツ、ルーマニアから1本1万円以上の高級タイヤが輸入されています。これは某社でしょう。

 輸入されたタイヤの金額と本数からタイヤ1本の輸入金額がでますが、タイヤ販売店での価格とちょっと違う。小型タイヤが多いからでしょうが、新車用タイヤと交換用タイヤの差があるのでしょう。

 タイヤの生産本数からいろいろ考えてみましたが、国民1人当たり毎年1本のタイヤを生産している事実はちょっと驚きですね。

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