【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、急伸一服で不安定な値動き
連載 2021-05-17
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが大型連休前の1キロ=240円水準から5月7日の262.00円まで急伸し、3月24日以来の高値を更新した。しかし、その後は上げ一服感が強まり、250円の節目水準まで上げ幅を削る展開になっている。
上海ゴム先物相場も1トン=1万3,000元台後半から5月10日の1万4,720元まで急伸していたが、1万4,000元の節目水準まで軟化している。
4月は世界経済の回復基調を背景にコモディティ価格は全面高の展開になったが、ゴム市場では上海ゴム市場における投機的な売り圧力が上値を圧迫する展開になっていた。しかし、5月入りしてからは割安感や出遅れ感から買いを入れる動きが強まり、一気に安値修正を進めている。一方で、主に米国でインフレリスクが高まる中、世界の株価は不安定化し始めており、ゴム相場も調整売りに上値を抑えられる不安定な地合になっている。
世界経済は復調傾向にあり、コモディティ市場は需要回復を織り込む形で値位置を切り上げるトレンドにある。新型コロナウイルスのワクチン接種で先行している欧米では、日常生活への回帰が始まっており、人々の外出が活発化すれば、自動車やタイヤ需要も上振れしやすくなる。特に北半球ではドライブシーズンを迎えてタイヤの消耗が進みやすい環境になっている。ガソリンなど輸送用エネルギー需要の回復が進んでいることからもゴム需要の回復期待は強い。
一方で、4月の米消費者物価指数は前年比4.2%上昇と、前月の2.6%上昇から跳ね上がっている。昨年4月は原油相場などが急落していたためその反動もあるが、マーケットでは急激な景気回復に供給サイドの対応が追い付かず、サプライチェーンに混乱が生じているのではないかとの懸念も浮上している。実際に自動車分野では半導体不足が自動車工場稼働の制約条件になっており、急激な経済成長にブレーキが掛かる一方、インフレ圧力のみが高まり続けるスタグフレーションを懸念する声も聞かれる。米金利上昇で円安圧力が発生していることは円建てゴム相場に対してポジティブだが、株安圧力が発生していることはネガティブであり、地合の不安定さが目立つ状況にある。
産地では減産期が続いているが、5月入りしてからやや集荷量が上振れ傾向にある。例年の季節トレンドに沿う動きになっている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、5月13日時点でUSSが前週比0.1%高の1キロ=65.02バーツ、RSSが同0.4%安の68.84バーツとなっている。産地相場は急伸が一服し、ほぼ横ばい気味の展開になっている。
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