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連載コラム「白耳義通信」55

「イースターの目玉だった筈が…」

連載 2021-04-19

鍵盤楽器奏者 末次 克史

 移動祝日にも関わらず、毎年どういう訳かイースター(復活祭)休暇中悪天候に見舞われるベルギーです。今年は4月半ばになろうという12日に雪が降りました。

 ベルギー連邦政府及び連邦構成体政府の発表によると、4月19日からは学校が再開。但し店舗については規制(予約制で、買い物は一人で行う)緩和されるのが、もう一週間先延ばされます。また65歳以上の居住者(日本人も含まれる)には、ワクチン接種のお知らせが届き始めています。案内にはどの製薬会社のワクチンかも記載されており、先日リスクの恐れを報じられた製薬会社があたった人は、不安を抱えているようです。

 さて、このコラムでも何度か取り上げたベルギー七大秘宝の一つであるゲントの祭壇画「神秘の子羊」(ファン・エイク Van Eyck 兄弟)ですが、着工から2年の歳月を経て先月末、聖バーフ大聖堂内にビジターセンターがオープンしました。ファン・エイク兄弟が生きた時代から更に遡った600年の大聖堂の地下室に足を踏み入れることになります。これまで見ることが出来なかった兄ヒューベルト Hubert の墓石もあり、フランダース政府観光大臣も「コロナ後、観光客を呼び戻す重要な役割を果たすことになる」と期待を寄せていました。

 イースター休暇中は、復元された「神秘の子羊」を見に、ベルギー国内から多くの人が訪れる筈だったのですが、休暇に入る前から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者が増え始めたのに加え、大聖堂関係者の中にも感染者が発生。オープンしたばかりですが、残念ながらイースター休暇中は閉館することになりました。

 この「神秘の子羊」には、盗難の憂き目に遭った「正義の審判者たち」”De rechtvaardige rechters” というパネルがあり、未だに戻ってきていません。今回のオープンに合わせベルギーの芸術家が 1930年に撮られた写真を元に復元しました。ファン・エイク兄弟の技法(異なる層で構成)を6カ月掛けて再現したそうですが、「現代の絵の具で当時の質感をだすのに苦労した」と、インタビューに答えられていました。

 わたしも未だ新しい複製画をこの目で見ていないのですが、ネットに上がっている画像をみると、青色が他のパネルよりも明るいような気もします。何れにせよ、コロナが収束したらいの一番に駆けつけたい場所です。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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