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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海主導で急落後に反発

連載 2021-04-19

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=222.50円まで値下がりして1月27日以来の安値を更新した後、230円台後半まで安値修正を進める荒れた相場展開になっている。不安定な値動きを繰り返す上海ゴム相場の動向に一喜一憂する展開が維持されており、極端に不安定な値動きになっている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台を維持できずに一時1万3,330元まで急落したが、その後は1万3,000元台中盤まで切り返している。

 上海ゴム相場の急落に関しては、①新型コロナウイルスの感染拡大による需要不安、②中国政策引き締めに対する警戒感の2点で解説されることが多い。

 欧州、インド、ブラジル、さらには日本でも新型コロナの感染被害は深刻化しており、タイヤ販売環境に対する影響が警戒されている。半導体不足による自動車生産計画見直しの動きが報告されている影響もあり、短期需要環境・見通しの悪化がゴム相場の上値を圧迫している。各国でワクチン接種が着実に進んでいるため、あくまでも一時的な混乱に過ぎないとの見方も強い。実際に原油相場は、需要拡大は年後半に加速するとの楽観的な見方を背景に、約1カ月ぶりの高値を更新している。しかし、ゴム市場では値強い需要不安を解消できない状態が続いている。

 また、中国市場に限定されたテーマとして、バブル回避のための政策引き締めが展開されるとの警戒感が強い。不動産や一部株価が投機色を強めていることで、流動性の引き締めで資産価格や経済活動を抑制するとの観測が強くなっている。中国政府は今年の経済成長率目標を6%超に設定しているが、現在の景気回復ペースであれば、政策引き締めの余地は十分にあるとの見方が支配的になっている。

 一方、産地は減産シーズンを迎えている。ソンクラーンの連休でタイ中央ゴム市場は13~15日まで休場となったが、供給サイドの要因では値下がり対応は求められなかった。むしろ季節的には値上がり対応が求められる局面だったが、産地情勢はマーケットではほとんど材料視されない地合が続いている。

 JPXゴム先物相場では順サヤ(期近安・期先高)傾向が強くなっており、むしろ期近限月主導で価格水準を切り下げる動きが目立った。地合の悪化を示す動きになる。

 上海ゴム相場はチャート上で昨年11月以来の安値圏に到達しており、同水準でのサポートの有無が注目される。原油や非鉄金属など他のコモディティ相場と比較すると相対的な割安感も目立つが、投機色の強い相場環境が続いている。

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