【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、リスクオン環境に支援される
連載 2020-10-12
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=190円台前半まで値上がりする展開になった。上海ゴム市場が10月1日~8日まで国慶節の連休入りしたことで売買高は低迷したが、リスクオン環境を背景にゴム相場は強含みの展開になり、9月3日以来の高値を更新している。ゴム市場の独自材料が乏しかったことで、リスク投資全体の地合を眺めながらの展開になった。
タイ中央ゴム市場の現物相場は、10月8日時点でUSSが前週比0.2%安の1キロ=54.21バーツ、RSSが同0.9%高の56.78バーツとなり、明確な方向性を打ち出せない展開になった。
集荷環境が全体として改善傾向にある中、急伸地合は一服している。ただ、集荷環境が正常化している訳ではなく、産地需給のタイト感を解消するには、引き続き高めの価格水準で集荷を促す必要があるとの見方が支配的になっている。この結果、上げ一服感が強まりながらも値崩れは回避されており、高値ボックス気味の展開になっている。
東南アジアはラニーニャ現象の影響もあって雨がちな天候が報告されており、土壌水分不足は解消に向かっているが、ゴムのタッピング(樹液採取)にはブレーキが掛かっている。また、マレーシアでは新型コロナウイルスの感染が急速に広がっており、一部地域ではロックダウン(都市封鎖)の再導入が農作業や流通に影響を及ぼすリスクも警戒されている。タイに関しては感染被害が限定されているが、世界的に新型コロナウイルスの第2波が観測される中、潜在的な供給リスクもゴム相場を下支えする。
一方、欧米の主要都市でも新型コロナウイルス対策のロックダウンが再導入されている。新車やタイヤ販売への影響が警戒されているが、需要リスクを織り込む動きは鈍い。ロックダウンの再導入といっても、各国政府は景気に対する影響を強く警戒しており、春先に導入したような不要不急の外出を全面的に禁止するような措置は実施されておらず、需要環境に対する影響は限定的との見方が優勢になっている。
ゴム需給に関しては、需要と供給の双方にリスクを抱えた状態にあるが、結果的には産地相場がトレンドを形成できない保ち合い相場になる中、ゴム市場における関心はリスクマーケット全体の地合に集中した。トランプ米大統領の新型コロナウイルス感染といったサプライズもあったが、早期に退院が実現したこともあり、マーケット環境は一定の落ち着きを見せている。株価との連動性が強い展開になっているが、上海ゴム市場の取引再開を受けて、ゴム相場独自の値動きがみられるかが焦点になる。
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