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連載「つたえること・つたわるもの」(91)

制御不能の新型コロナ禍、ガイア(地球生命共同体)が流す涙。

連載 2020-06-09

出版ジャーナリスト 原山建郎

 米国のジョンズ・ホプキンス大学のまとめによると、新型コロナウイルス感染が世界全体で確認された方の総数は昨日(6月8日)の時点で約695万人(米国192万人、ブラジル67万人、ロシア46万人)、亡くなった方は約40万人(米国11万人、英国4万人、ブラジル3万人)となっている。日本での感染者数は昨日(6月8日)正午現在で17,174人(世界19位)、死者数は916人(世界18位)にとどまっている。

 しかし、麻生太郎副総理兼財務大臣は先週(6月4日)の参議院財政金融委員会で、日本の死者数がほかの先進国より少ない理由について、「(ほかの先進国と比べて)うちの国の国民の民度のレベルが違う」と発言して、世界中からブーイングの嵐を浴びた。このお粗末な発言の主は、今秋にも第二波・第三波来襲が予想される新型コロナ禍の恐ろしさとして、世界各地で少しずつ変異しながら感染力を増強し、また治療薬や予防ワクチンの早期開発は困難という「制御不能に陥った新型コロナ禍」の実態を理解していない。

 同じように、安倍晋三首相や小池百合子都知事も来年に延期された「東京オリンピック・パラリンピック」の完全な形での開催を念頭に、それを是が非でも開催するための対策を立てているようだが、本気でオリンピックが開催できると考えているのだろうか? IOCのバッハ会長でさえ「来夏開催がむずかしければ、中止する」と述べたように、仮に、日本で感染者数が激減したとしても、感染者数が増えている南米やアフリカなどから参加するアスリートや観客がもたらす輸入感染症によって、「2021東京五輪パンデミック(感染爆発)」という歴史上の汚点を残すことになりかねない。東京五輪出場を心待ちにしている世界のアスリート、観戦を楽しみにしている人びとの期待を十分理解しながらも、いますぐにでも「東京五輪中止」を宣言し、「ウィズ・コロナ」に全力を投入することが、真の政治決断というものではないだろうか。

 ところで、致死率の高いウイルス感染症といえば、1980年にWHOが根絶を宣言した天然痘(ウイルス)は、1978年(英国のバーミンガム大学微生物研究室からウイルスが漏洩。上の階で働いていた女性が天然痘に罹患し、1か月後に死亡)を最後に感染例は報告されていない。1980年以降、ほとんどの地域で種痘の接種が行われなくなったために、多くの人が天然痘に対する耐性をもっていない。いまでも、いくつかの国で天然痘ウイルス株を保有しており、バイオテロ(生物兵器)に利用される可能性が高いウイルスとして、エボラ出血熱ウイルスなどと同じWHOの「リスクグループ4」に指定されている。したがって、今回の新型コロナウイルス感染症の発生源が、中国の武漢ウイルス研究所であったと推測されることからも、中国だけに限らずどこの国においても、同ウイルスを生物兵器に転用する可能性も完全には否定できない。

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