【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、経済再開で2カ月ぶり高値
連載 2020-05-25
(マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅努)
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=150円台まで値上がりし、3月19日以来となる約2カ月ぶりの高値を更新した。
上海ゴム先物相場も1トン=1万元台で底固く推移しており、3月11日以来の高値を更新している。
新型コロナウイルスの感染被害は着実に収束に向かっているとみられる。各国で経済活動が再開されており、日本でも緊急事態宣言が段階的に解除されている。新型コロナウイルスの第2波を警戒する声も聞かれるが、ワクチン開発の動きが活発化していることもあり、通常の経済活動再開への期待感は着実に強くなっている。
しかし、新車販売環境が早期に正常化する見通しにはなく、トヨタ自動車は2020年3月期決算発表において、販売環境が昨年並みの水準を回復するのは来年初めになるとの慎重な見通しを示している。他の自動車メーカーも、市場環境の正常化には時間が必要との認識を示しており、新車用タイヤ販売環境が直ちに正常化する訳ではない。
また買い替え用タイヤに関しても、新型コロナウイルスの感染リスクが残されていること、雇用環境の急激な悪化で消費者マインドが悪化していることで、回復には時間が必要との見方が強い。
しかし、資源市場では、需要環境が最悪の状態を脱して正常化に向かうプロセスを高く評価されており、原油や銅など他の産業用素材市況も緩やかなペースではあるが、戻り高値を更新する動きをみせている。ゴム市場においても、「今後の需要低迷に対する警戒感」よりも、「需要環境が改善トレンドに突入した」ことの方が重視されており、慎重に安値修正を進める展開になっている。
今後も新型コロナウイルスを収束に向かわせることができるのかと同時に、景気回復ペースに大きな影響を及ぼすとみられているワクチンや治療薬開発の動きが注目されやすい。
一方、産地では減産傾向が続いている。タイ中央ゴム市場の集荷量は今季最低水準を維持しており、特にUSSの集荷はほとんど行われていない。
ただ、産地相場は目立った動きを見せていない。RSSは5月8日時点の1キロ=39.58バーツに対して、15日は前週比0.3%高の39.69バーツ、21日は同0.4%安の39.55バーツであり、4月28日以降は39バーツ台で膠着状態が続いている。
今後は産地降水量の改善として生産水準も回復に向かう見通しになっている。今季は異常気象も発生していない。ただ、新型コロナウイルスによる集荷、輸送、出荷トラブルの発生には注意が求められる状況が続く。
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