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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、新型コロナで約11年ぶり安値

連載 2020-04-06


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=140円水準まで軟化する展開になった。前週に続いて新型コロナウイルスによる需要環境・見通しの悪化を反映した値動きになっている。世界各地の経済活動が急速に鈍化する中、ゴム需要がどこまで減少するのか分からないとの不安心理が、価格に反映されている。2009年3月以来の安値を更新している。

 上海ゴム先物相場も1トン=9,000元台中盤で上値の重い展開が続いている。

 新型コロナウイルスの感染被害は、米国、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスなど、欧米諸国で急速な広がりを見せている。特に米国では既に感染者数が20万人を突破しており、トランプ米大統領は3月31日に「地獄の2週間になるかもしれない」との警戒感を示している。各国で外出を規制するロックダウンが行われており、新車販売はどこまで落ち込むのか見通しが立たない状況が続いている。しかも、従業員の感染被害防止やサプライチェーンの混乱から自動車工場の稼働停止も相次いでおり、当然新車用タイヤ市場の落ち込みは避けられない状況になる。また、消費者の外出が控えられる中、買い替え用タイヤ市場も急減速している。

 タイヤ大手ミシュランの市場調査では、1~2月期の中国タイヤ市場は、新車用で前年比45%減、買い替え用で32%減となっているが、今後は世界各地でこれに近い数値が報告される可能性が高まっている。

 世界の関心事は、新型コロナウイルスの感染被害を最小化することに集中しており、そのために経済活動が犠牲にされている。ゴムに限らず、原油や銅などの産業用素材市況は軒並み低迷しており、ゴム相場も上値の重い展開が維持されている。

 新型コロナウイルスは生産地でも感染が広がっているが、供給リスクを織り込むような動きは鈍い。農場から港湾業務までサプライチェーン全体で労働力不足が警戒される状況だが、ゴムに関しては産地主導の値上がりは確認できない。

 タイ中央ゴム市場の集荷量はUSS、RSSともに大きく落ち込んでいるが、これは季節要因の影響も大きく、供給リスクを織り込むような動きは確認できない。現物相場は4月2日時点でUSSが前週比4.9%安の1キロ=36.70バーツ、RSSが同3.2%安の38.34バーツ。産地相場もダウントレンドを維持している。

 新型コロナウイルスは、ゴム市場において「需要不安」と「供給不安」を同時に高めているが、「需要不安」の織り込みが優勢の地合が続いている。感染被害の拡大状況を眺めながらの不安定な地合が続く。

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