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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中国新型肺炎で荒れた展開

連載 2020-02-03


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=170~185円水準で乱高下する展開になった。前週に続いて中国の新型コロナウイルスの感染被害拡大に対する警戒感が強く、1月27日には170.00円まで急落し、昨年10月30日以来の安値を更新した。その後は短期的な下げ過ぎ感もあって186.30円まで急反発したが、改めて戻りを売り込む動きも強く、180円水準まで再び下押しされている。

 上海ゴム相場は春節(旧正月)の連休で休場となっている。春節の延期で2月3日に取引が再開される予定になっている。急騰と急落が繰り返される極端に不安定な地合になっている。新型コロナウイルスは死者、感染者の急増傾向が続いており、今後の展開を予想することが不可能な状態に陥っている。徐々に情報は増えてきているが、感染被害のピークが何時になるのか、誰も予想できない状態が続いている。

 こうした中、中国実体経済にも深刻な影響が生じるのではないかとの見方が広がりを見せ始めている。S&Pグローバルは、交通費や娯楽費などの個人支出が10%減少すれば、中国の経済成長率は1.2%下がるとの試算を発表している。また、中国の政府系シンクタンク中国社会科学院のエコノミストは、1~3月期の成長率が約1%押し下げられる可能性を指摘している。

 もはや一時的な混乱状態に留まらないとの見方から、中国経済に対する依存度が高い非鉄金属相場が急落しており、その流れからゴム相場も下押しされている。

 特に、最も感染被害が大きい武漢は自動車生産拠点が集中しているため、新車生産などに影響が生じると、タイヤ用ゴム需要も大きく下振れする可能性がある。自動車・同部品工場の操業停止も相次いでおり、今何が起きており、今後はどのような展開になるのか、予見可能性が著しく低下した状態に陥っている。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、1月30日時点でUSSが前週比1.2%高の1キロ=41.00バーツ、RSSが同0.5%安の42.23バーツ。産地相場も不安定な値動きになっている。急落地合には一定のブレーキが掛かっているが、本格的に安値修正を進めるような動きはみられず、決定打を欠いている。

 東南アジアでは、引き続き土壌水分不足が深刻な状態にある。タイ政府は貯水施設建設など対応を進めているが、メコン川の水位も記録的な低水準になっている。この状態で乾季に向かうことに対しては危機感もあるが、産地市場主導の価格形成は見送られている。

 新型コロナイルスのもたらす不確実性があまりに大きく、不安定な相場環境が続きやすい。

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