連載「つたえること・つたわるもの」(78)
大学入試。英語に4技能を求めるのに、日本語は2技能のみ。
連載 2019-11-26
出版ジャーナリスト 原山建郎
今月初め(11月1日)、文科省は2020年度の大学入試テストに導入される予定だった「英語の民間資格・検定試験」を、当面の間、延期すると発表した。英語の民間試験導入は大学入試の共通テストで「読む・聞く・書く・話す」力の4技能を問うために、英検(英語検定協会が運営する実用英語技能検定)やGTEC(ベネッセコーポレーションが実施している英語4技能検定)などの民間試験を活用し、2020年4月~12月の間に受験した高校2年生の成績を大学側に提供するというものであった。
これら英語の4技能(リスニング・スピーキング・ライティング・リーディング)検定試験の中で、文科省はとくに日本の高校生・大学生に不足している「話す」力を問題視しているという。また、新卒学生に「即戦力」を求める経団連などの経営者団体からは、「英語が話せないと、ビジネスで困る」「英語が母国語でない国々でも、英語を普通に話している」として、新卒採用試験でのTOEIC(英語を母語としない人を対象とした国際コミュニケーション英語能力テスト)スコアに、750点以上(満点は990点)を求める大手企業(楽天は入社までに800点以上)、外資系企業(ジョンソン・アンド・ジョンソンは900点以上)が増えている。
近年、世界共通語として用いられる英語の〈話す・聞く〉力のレベルを、何とかして世界標準にまで引き上げ、グローバル経済を担う「即戦力」として対応できる人材の養成を、新卒採用試験では間に合わないとして、大学入試の段階で前倒しして選抜したいと、政府(文科省)も経営者団体も考えているらしい。しかし、民間英語試験の多くは、タブレット端末に向かって声を吹きこむ方式を採用しているが、機械に向かって英語で1分間話しなさいなどという試験で、実際のやり取り(対話)の能力が判定できるだろうか。
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