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連載コラム「白耳義通信」38

「クリスマスシーズン到来」

連載 2019-11-26

鍵盤楽器奏者 末次 克史

 南部で初雪が観測されたベルギーです。冬時間になりそろそろ一ヶ月経とうとしているのですが、未だに体内時計は夏時間のままで、目に入ってくる景色と時間にズレを抱えたままでいます。

 10年前まではここベルギーで “Black Friday Sale” なる文字を街で見ることは余り無かったのですが、ここ数年11月も中旬になってくるとあちこちの店や新聞・雑誌で謳っていたり、またラジオの CM からも「何% OFF!」という声が聞こえてくるようになりました。元々はアメリカで始まったこの習慣。ヨーロッパの人にとっては「何?」とクエッションマークが付いていたのですが、安いものには抗えないのでしょうか。年々凄まじさを増しているような気がします。

 それは送られてくるメールからも察することができ、タイトルに「Black Friday」と入っているメールが年々増えてくるようになりました。自分がブラックフライデーを知った当初は、アメリカの習慣の恩恵を受けられてラッキーくらいに思っていたものですが、こうも連呼されると少々ウンザリしているのも事実です。

 日本では馴染みの無かったハロウィンがいつの間にか定着したようですが、ブラックフライデーセールもその内大々的に行われるようになるのでしょうか。

 そしてこのセールが終わる頃、つまり11月最後の週末からベルギーの大きな街ではクリスマスマーケット(Kerstmarkt/Marché de Noël)が立ち並び始めます。今年は既にブルージュ(Brugge)や世界で一番小さな町デュルビュイ(Durbuy)で始まっており、いよいよクリスマスシーズン到来です。首都ブリュッセルのグランプラスではツリーも立ち(例年にも増して立派なクリスマスツリーが広場の真ん中に置かれています)、否が応でもクリスマス気分にさせられます。

 春や夏の爽やかなシーズンも良いですが、個人的にベルギーという国は秋から冬に掛けて本来のベルギーの姿を表すように思います。というのはレンガ造りの多いこの地では太陽が燦々と降り注ぐ季節より、どんよりとした鉛色の雲の下の方が、より建物の魅力が引き立つように思うからです。白壁の家が立ち並ぶ地中海沿岸とは印象も大きく違います。

 ホットワイン片手にオレンジ色のランプに照らされたクリスマスマーケットを巡る旅は如何でしょうか。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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