白耳義通信 第113回
空に描かれたベルギー文化
連載 2026-03-16
鍵盤楽器奏者 末次 克史
空港で飛行機を眺めていると、時々「おや?」と思うような機体を見ることがあります。
普通の旅客機は会社のロゴとシンプルな塗装がほとんどですが、中には機体いっぱいにイラストが描かれている飛行機もあります。
日本では、ポケモンが描かれた特別塗装の飛行機を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
またANAの機内安全ビデオもユニークで、以前は歌舞伎、現在はポケモンをテーマにしたものが使われています。国や年齢を問わず楽しめるよう工夫されており、日本らしいサービスの一つだと感じます。
実はベルギーにも、少し似た取り組みがあります。ベルギーの航空会社「ブリュッセル航空」が行っている「ベルギー・アイコン」という特別塗装のシリーズです。
これは、ベルギーを代表する文化や人物をテーマにしたデザインを飛行機に描くというものです。いわば「空を飛ぶベルギー文化」といったところでしょうか。
その中でも特に有名なのが、漫画 「タンタンの冒険」をテーマにした機体です。青い機体に主人公タンタンと犬のスノーウィが描かれたデザインで、空港でもひときわ目立ちます。
タンタンはベルギーの漫画家エルジェによって生み出されたキャラクターで、世界を旅する少年記者の冒険を描いた作品です。ヨーロッパでは非常に有名ですが、日本では名前を聞いたことはあっても、実際に読んだことがある人はそれほど多くないかもしれません。
もう一つ有名なのが「スマーフ」です。青い小さな妖精のキャラクターで、こちらもベルギーの漫画家ペヨが生み出しました。ヨーロッパでは子どもから大人まで広く知られている人気キャラクターです。
こうして見ると、漫画や芸術が飛行機のデザインになるという発想は、いかにもベルギーらしいように思います。ベルギーは国としては小さいのですが、漫画や芸術、デザインなどの文化がとても豊かな国です。
その文化を飛行機という形で世界に紹介するこの「ベルギー・アイコン」は、そんな発想から生まれたシリーズなのかもしれません。
空港でこの飛行機を見かけると、「ああ、ここはベルギーだな」と感じさせてくれる、ちょっとした空の名物になっています。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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