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連載「つたえること・つたわるもの」(66)

新着トピック「光免疫療法」を、鍼灸師の勉強会でおさらいする。

連載 2019-05-28

 なぜ、ここで小柴さんの話を紹介したかというと、小柴さんのような世界的科学者には、難解な専門用語ではなく、その本質をひと言でわかりやすく「伝えよう」とする優しさがあると感じたからである。

 小林さんの講演を聴く人びとは、その大半が西洋医学を修めた医師、歯科医師だから、もちろん専門用語を使ったとしても、容易に理解できるちから(能力)をもっている。しかし、たくさんのイラスト図解、症例写真を示しながら話を進める小林さんの講演は、専門外の私が聞いても、つまり高校時代に受けた生物(生理学)の授業レベルの知識でも、じゅうぶん理解できるものであった。小林さんもまた小柴さんのように、最先端医学をわかりやすく「伝えよう」とする優しさをもつ科学者のひとりであった。

 早速、5月26日の夜、若い鍼灸師の勉強会「いのち(生命)とからだ(身体)の社会学」で、2週間前に聞いた「光免疫療法」をおさらいすべく、最新医学トピックとして急遽とり上げることにした。

 がん細胞を「光免疫療法」で死滅させる仕組み(作用機序)は、およそ次のようなものである。

 まず一つは、直接的な抗腫瘍効果、つまりがん細胞破壊による免疫の活性化である。がん細胞(抗原)そのものを標的に、直接たたく(がん細胞の壊死・破壊)方法である。

① がん細胞(抗原)にくっつく抗体に近赤外光線の光で化学反応を起こす物質(IR700)を付けて、注射で体内に入れる。
② IR700が付いた抗体は全身を循環する血流に乗って、がん細胞に付着する。
③ そこに、ランプや内視鏡などで近赤外光線を当てると、抗体に付いている物質(IR700)が熱(化学反応)を発して、がん細胞の細胞膜を破壊する。
④ がん細胞が破壊されると、たくさんのがん抗原が放出され、そのがん抗原を貪食した樹状細胞(木の枝のような突起を持つ細胞)を介して、がん抗原の特徴がリンパ球に記憶される。
⑤ いわばワクチン療法のように、がん抗原の特徴を記憶したがリンパ球が、がん細胞を攻撃することができるようになる。
⑥ 正常細胞に害を与えず、がん細胞だけを死滅(壊死)させる。

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