連載「つたえること・つたわるもの」(61)
3・11。原発供養、祈りのこころ。歌に詠む、物語に語り継ぐ。
連載 2019-03-12
2011年4月14日から、天皇陛下は皇后陛下とともに被災地・避難者お見舞の訪問をされている。翌年(2012年)1月、被災地ご訪問時のお気持ちを詠まれた天皇陛下の御製と皇后陛下の御歌が発表された。
天皇陛下御製
《東日本大震災の津波の映像を見て》
☆黒き水うねり広がり進みゆく仙台平野をいたみつつ見る
《東日本大震災の被災者を見舞ひて》
☆大いなるまがのいたみに耐へて生くる人の言葉に心打たるる
《東日本大震災後相馬市を訪れて》
☆津波寄すと雄々しくも沖に出でし船もどりきてもやふ姿うれしき
《仮設住宅の人々を思ひて》
☆被災地に寒き日のまた巡り来ぬこころにかかる仮住まひの人
皇后陛下御歌(みうた)
《手紙》
☆「生きてるといいねママお元気ですか」文(ふみ)に項(うな)傾(かぶ)し幼な児眠る
《海》
☆何事もあらざりしごと海のありかの大波は何にてありし
《この年の春》
☆草むらに白き十字の花咲きて罪なく人の死にし春逝(ゆ)く
そして2013年1月に発表された天皇陛下の御製と皇后陛下の御歌。歌会始のお題は「岸」であった。
天皇陛下御製
☆津波来(こ)し時の岸辺は如何なりしと見下ろす海は青く静まる
皇后陛下御歌
☆帰り来るを立ちて待てるに季(とき)のなく岸とふ文字を歳時記に見ず
3・11への鎮魂を、歌に詠む、物語に語り継ぐ、いま、私たちに求められる、祈りのこころ。
【プロフィール】
原山 建郎(はらやま たつろう)
出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員
1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。
2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。
おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。
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