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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、じり安で170円割れに

連載 2018-09-10


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=160円台後半まで下落した。8月22日の180.80円をピークに値下り傾向を維持しており、概ね8月中旬の急伸前の値位置に回帰している。

 上海ゴム相場も、8月22日の1トン=1万2,855元でピークアウトし、その後は1万2,000元台中盤での保ち合いを経て、1万2,000元割れを打診する局面になっている。

 8月21~22日にかけてゴム相場は上海市場主導で急伸したが、結果的にはファンダメンタルズの裏付けが乏しい投機主導の一時的な急伸地合であったことが確認できる値動きになっている。

 インドの洪水被害、東南アジアの大地震、モンスーンなどを受けて、天然ゴム生産高見通しに下方修正圧力が発生していることは間違いない。このため、ゴム相場のコアレンジ切り上げを予想する声も強くなっていたが、実際には年後半の需給緩和状態に修正を迫るようなレベルの供給障害ではなく、ゴム相場を断続的に押し上げていくことに失敗している。

 マーケットの関心は、改めて需給緩和や過剰在庫環境に向かっている。投機要因で急伸した相場が、ファダメンタルズによって改めて下押しされる展開になっている。

 産地相場も、こうした東京や上海相場の値動きと連動している。6日時点のタイ中央ゴム市場の現物相場は、USSが前週比3.2%安の1キロ=41.73バーツ、RSSが同3.1%安の43.06バーツとなっている。産地では既に安値更新サイクルが再開されており、産地から安値修正を打診するような動きはみられず、むしろ産地主導で下値模索の展開になっている。

 USSは40バーツ割れさえも意識される状況であり、当然に生産者の危機感は強い。しかし、マレーシア・ゴム・ボードは、国際協調は難しいと報告している。タイとマレーシアは比較的市況対策に積極姿勢を見せているが、必ずしも市況対策再開に向けて国際的なコンセンサス形成が進んでいる訳ではなく、当面は国別の限定された市況対策に留まらざるを得ない可能性が高い。

 特に注目が集まっているのは、インドネシア通貨ルピアの急落である。トルコリラや南アフリカランドといった新興国通貨の急落が、東南アジアにも波及し始めている。こうした中、通貨防衛の観点から東南アジア各国は財政引き締めに動かざるを得ず、ゴム市況対策に大規模な資金投入を行うことが難しくなっている。

 このまま市況対策の議論を本格化させるか、天候悪化といった動きで需給緩和見通しに修正を迫らない限り、大規模な反発は想定しづらい状況になっている。

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