連載「つたえること・つたわるもの」(48)
新しい「意味」を生む対話の身体性、クリエイティブな関係性。
連載 2018-09-11
出版ジャーナリスト 原山建郎
明治大学文学部教授の斎藤孝さんは、『コミュニケーション力』(岩波新書、2004年)の中で、「理想的なコミュニケーションとはどういうものか。私は、クリエイティブな関係性だと思う」と述べている。
斎藤さんがいうクリエイティブ(創造的)とは、二人で話(会話や対話、対談)をすることで、新しい意味がお互いの間に生まれる(創り出される)ことをさすのだという。
たとえば、ある知識を持つ話し手のAが、聞き手のBにその知識を伝えると、そこでBから質問が行われ、Aからの新たな情報(答え+周辺情報)が対話的にフィードバックされるので、聞き手であるBにとっては新しい意味を獲得することになる。これは、たとえば大学の授業で専門的知識を持つ教員の講義を聴いた学生が、わからない事柄を質問し、または自分の意見をコメントするなどがそれにあたる。
この場合、話し手(教員)の方には新しい意味は基本的に生まれていない。つまり、聞き手(学生)側が質問やコメントなどのアクション(行動)を起こすことで、教員が学生に伝えようとして話す意味が少し変わってくる。これは、聞き手の学生にとっては情報伝達(講義内容)の質を高めることになるが、話し手の教員としては授業で提供する講義内容の「おかず」の品数が増えた程度のインパクトかもしれない。
しかし、必ずしもそうとばかりは言えない、と斎藤さんは考える。
しかし、ここで私の言うクリエイティブな関係性は、話をすることでお互いにとって新しい意味がその場で生まれるという関係を指している。先ほどのケース(※質問やコメントのアクションを起こすだけの場合)では、話し手の方には新しい意味は基本的に生まれていない。そうではなく、聞き手が発した言葉によって自分が刺激され、新しい意味を見つけ出すことがある。二人で「ああそうだったのか、気づかなかったね」と喜び合うような瞬間がある。それがクリエイティブな対話の関係だ。
(『コミュニケーション力』14ページ)
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