【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、産地主導で年初来安値更新
連載 2018-07-09
マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=170円の節目を割り込む展開になった。上海ゴム相場の反発が一服したことで、改めて戻り売り優勢の展開になっている。産地相場の軟調地合、米中貿易摩擦の深刻化などを手掛かりに、年初来安値を更新する展開になった。
米中貿易摩擦は、ゴム相場に対して二つの影響を及ぼしている。一つが貿易摩擦による資源需要の減退リスク、もう一つが人民元安による人民元建てゴム相場の押し上げ圧力である。
6月下旬には人民元相場の下落ペースが加速したことが上海ゴム相場のリバウンドを促がしており、更に人民元安が進む可能性が警戒されていた。しかし、7月3日に中国人民銀行の易網総裁が人民元の「安定を維持する」と発言したことで、これ以上の人民元安は政策介入を招きかねないとの見方が広がる中、足元では人民元安が一服している。この結果、上海ゴム相場の戻り圧力も一服しており、「米中貿易摩擦→人民元急落→上海ゴム相場高」の流れにはブレーキが掛かった。
こうして上海ゴム相場の上値が圧迫されれば、東京ゴム相場が大きく上昇する必要性は乏しい。産地の集荷量は安定し、現物相場は軟化傾向を維持している。
台風シーズンに突入したことで突発的な供給障害には注意が必要だが、東南アジアの気象環境は総じて安定しており、ゴム生産には適した状態が維持されている。適度の降雨が観測される中、タイ中央ゴム市場でも集荷量は安定しており、それに伴い現物相場に対しては下押し圧力が発生している。
7月5日時点ではUSSが1キロ=43.03バーツ、RSSが44.80バーツとなっているが、前週比だとUSSが2.0%安、RSSが3.6%安となっている。ともに今季最安値の更新が続いており、上海ゴム相場の動向に関係なく、産地相場の値下り傾向は維持されている。
USSに関しては40バーツ割れも現実的な脅威になっているが、現段階では農家の抗議デモや売り渋り、生産国政府の市況対策といった、供給環境に大きな変化を迫るような動きは確認できない。
5月22日の202.10円からは既に30円超の値下りであり、過熱感や下げ過ぎ感は強い。ただ、年初来安値の更新が続いている相場であり、このまま170円の節目を完全に下抜くと、2016年前半の150円水準まで値が飛ぶ可能性も浮上する。
季節要因から需給緩和圧力が発生し易いタイミングに、米中貿易摩擦のリスクも同時に抱えた状態になっている。産地で供給サイドが安値限界を迎えるか、米中貿易摩擦解消に向けての動きがみられるまでは、下値不安が残る。
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