【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、産地主導の急落が続く
連載 2018-06-18
マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=180円水準まで急落する展開になった。産地相場のダウントレンドが一段と明確化する中、消費地相場に対しても下押し圧力が強くなっている。5月22日の202.10円をピークに20円幅の急落となり、4月6日以来の安値を更新している。
生産地の気象環境は、引き続き安定している。インドネシアの一部でやや降水量が不足しているが、タイ、ラオス、カンボジアなどでは潤沢な降雨が観測されており、農産物生産環境は良好である。日本の気象庁は、2018年春にラニーニャ現象が収束し、夏にかけては「平常の状態が続く可能性が高い」と報告している。
引き続き生産地の気象環境には注意が必要だが、タイ中央ゴム市場の集荷量は減産期明け型の増加プレッシャーに晒されており、それが現物相場を下押しする展開が続いている。タイ産RSSは6月7日時点の1キロ=49.64バーツに対して、14日時点では47.47バーツまで、1週間で4.4%の急落となっている。これは2月下旬以来の安値圏であり、産地発の明確な下押し圧力が、消費地相場も下押しする構図が維持されている。
特に大きな値崩れを起こしているのが上海ゴム相場であり、6月初めの1トン=1万1,000元台後半に対して、13日の取引では1万1,000元台を割り込み、中心限月ベースでの年初来安値を更新している。5月下旬には1万2,000元台に乗せていた相場だが、1万元の節目も意識される軟調地合になっている。
更に、米中通商環境に対する警戒感も再燃している。中国の知的財産権侵害を巡って、米政府は早ければ6月15日にも対中制裁課税に踏み切るか否かの決断を下すことになる。トランプ米大統領の決断次第になるが、仮に米中双方が制裁・報復課税に踏み切る貿易戦争に発展すると、6月下旬にかけてのゴム相場は新たな下振れリスクを抱えることになる。
一方で、タイ産RSSの50バーツ割れは、コスト論の視点で下げ過ぎ感が意識され易い。上海ゴム相場も2016年上期の軟調地合において1万元の節目水準でサポートされており、1万元割れからの値崩れは見送られている。
現時点では、価格低下を背景とした売り渋りや農家の抗議デモといった動きは限定されている。ただ、いつゴム農家が政策対応を求める抗議活動を本格的に展開しても不思議ではない程度の安値水準に到達していることには注意が求められる。需給要因を背景に下押しされている相場だが、生産者サイドがどの価格水準で安値に拒否反応を示すのかが注目される地合になる。
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