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【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER

ランクセス、「サステナブルなタイヤ」製造等に貢献する持続可能なゴム添加剤―省資源・省力化を付加価値として強く打ち出す

その他 2024-06-17

 特殊化学品メーカー・ランクセスは、2024年の主要テーマに「Less is more」を掲げた。“サステナブル”への注目度がより高まっている昨今、「持続可能なゴム薬品へ代替するには難しい製品もあり、当社にとって非常にチャレンジングだが、その役割は大きいと感じている」(渥美貴生ランクセス取締役兼ビジネスユニット ラインケミー日本・韓国 統括マネージャー)中で、製品による省資源・省力化を付加価値として強く打ち出していく方針だ。今回、特に「サステナブルなタイヤ」製造等に貢献し得る、同社の持続可能なゴム添加剤について話を聞いた。

「Less is more」を主要テーマに、省資源・省力化を付加価値として打ち出す

 2024年のテーマとして「Less is more」を掲げたランクセス。“サステナブル”への注目度がより高まっている昨今、製品による省資源・省力化を付加価値として強く打ち出していく方針だ。

含有物50%以上に持続可能な原材料を使用した「ブルカノックス HS」

ブルカノックス HS


 現在、各タイヤメーカーが2050年までにサステナブル原材料比率100%のタイヤ製造を目指す等といった、持続可能な社会の実現に向けた目標を掲げている。同社はグローバルな原材料メーカーとして、こうした目標達成へ貢献するためにも、ゴムコンパウンド向けに持続可能な老化防止剤の提供を開始する。

 老化防止剤「Vulkanox(ブルカノックス)HS」は、含有物の50%以上に持続可能な原材料を使用。主な原材料であるアセトンとアニリンのうち、「アセトンを、持続可能なフィードストックから生産されるものに切り替え使用する」(渥美貴生ランクセス取締役兼ビジネスユニット ラインケミー日本・韓国 統括マネージャー)。

 同製品はISCC Plus認証(国際持続可能カーボン認証)により、信頼できる配合基準を満たし、正しく適用されていることが証明される。

 また同社が老化防止剤を生産しているブルンスビュッテルの生産工場は、2024年内に認証を取得する予定だ。これによりタイヤメーカーは、新たに認証を取得することなく、従来品と同等の特性を持つ「ブルカノックス HS」が使用可能となる。

ダストフリーを実現する防着剤「レノディブBO-3300 Pearls」

レノディブBO-3800 Pearls ※記事内とグレードは異なる


 ゴム製造において、未加硫ゴムシートを折り畳んで保管する際、シート同士の密着を防ぐ必要がある。その防止のため、シートを防着剤が溶けたバッチオフ液に浸漬する。しかし、従来の防着剤は粉末状のものが多く、バッチオフ液への投入時に粉が飛散するなど、作業環境面に課題があった。

 「Rhenodiv(レノディブ)BO-3300 Pearls」は粉末状ではなく、ハードコンタクトレンズのようなパール形状のため、投入時にダストフリーで現場をクリーンに保つことができる。「水溶性のため、形状の違いによるパフォーマンスへの影響もない」(同)。

シリコンフリーのタイヤ内面用離型剤「レノディブBP-9500」と「同BP-166」

 「レノディブBP-9500」と「同BP-166」はシリコンフリーの離型剤。そのため、残留したシリコンの除去工程が不要だ。

 昨今、EV向けタイヤ開発もあり、タイヤの内側に吸音性を高めるスポンジや空気圧センサー等、付加機能を追加するケースが増加している。それらを確実に接着させるには、従来の離型剤の場合、レーザーや薬品を使いタイヤ内面を洗浄し、離型剤のシリコン残留物を完全除去する必要があった。

 ノンシリコン離型剤である「レノディブBP-9500」や「同BP-166」の使用で、生産設備の洗浄を最低限に抑えることが可能となる。「ユーザーのコスト効率と持続可能性の向上に寄与し得る。ノンシリコン離型剤のニーズは、今後さらに高まっていくと予想している」(同)。

シリカ配合に使用できる「レノキュア DR/S」

 「Rhenocure(レノキュア)DR/S」は、シリカに50%のポリエチレンイミンを吸着させた二次促進剤。芳香族部分を含まない設計のため、加硫中に有害な副生成物が生じない。投与の容易性や分散の迅速性、分岐ポリマー構造によって、ブルーミングを大幅に低減し、製造プロセスを合理化する。

 タイヤコンパウンドに同製品を高速二次促進剤として使用し、「Aflux(アフラックス)37」及び「同42」を併用することで、架橋プロセスを正確に制御できる。シリカ充填トレッドでは、シリカの分散の促進やシラン処理の活性化、ペイン効果の緩和で、優れたタイヤ性能をもたらす。

 「エコタイヤのほとんどはシリカ配合だ。その配合で従来使われるDPG(ジプロピレングリコール)は有害性があり、『レノキュア DR/S』はその代替品として提案できる段階となった。薬品をより安全なものに置き換えた方が、自動車やタイヤ業界にとってプラスになるだろう。今後もシリカ配合は高い比率で扱われていくと思うので、積極的に提案していきたい」(同)

再度、脚光を浴び得るゴム添加剤

 同社はこれらゴム添加剤を2024年3月19~21日まで開催された「Tire Technology Expo(タイヤ・テクノロジー・エキスポ)2024」(ドイツ・ハノーバー)に出展。イベント前から「現地で話を聞きたい」といった反響があったという。

 「“サステナブル”がどの業界でも大きなテーマとなっている今、その領域に貢献できる原材料への興味・関心は大きいと感じた。

 出展したゴム添加剤の中には、すでに上市していた製品もあったが、コロナ禍でなかなか注目されなかった。現在、当社でも一時中断していた新規開発のテーマの再開や、サステナブル原材料の見直し、ユーザーによるゴム配合の新規開発など、動きが活発になっている。そういったなかで、日の目を見ることができなかった当社の製品に対し、改めて『評価してみたい』といった声もいただいている。過去テストした時に芳しくなかったものが、新たな配合で本来の性能を発揮できる可能性が大いにあり、期待しているところだ」(同)

100%持続可能なゴム薬品というチャレンジングな目標

 「すべてのゴム薬品を持続可能なもので作るのが最終的な目標となるが、アニリンなど非常にチャレンジングなゴム薬品素原料もある。しかし、この課題解決をしていかなければ、ユーザー目標の『原材料を100%持続可能なものに』がたった1%だけでも達成できなくなってしまう。

 当社では現在2050年に向け、グリーンなアニリンをベースとした加硫促進剤の開発も、大きく、そして長期的な目標として取り組んでいる」(同)

 同社は最終的に、地球に住む人々や環境そのものに貢献できるよう、サプライチェーンの中で役割を担っていく。

取締役 ビジネスユニット ラインケミー 日本・韓国 統括マネージャー 渥美貴生氏


 ゴム報知新聞版「SUSTAINABLE & RUBBER」は、ゴム業界に関連する国や団体、企業などによる「持続可能な社会の実現」に向けた活動に焦点を当てるシリーズです。なお、弊社ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の掲載内容とは異なります。

 ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の詳細はhttps://gomuhouchi.com/other/49351/まで。

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