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ゴムの先端研究<12回>

東京工業大学物質理工学院材料系助教・博士(工学)赤坂修一氏

その他 2020-10-12

振動、騒音対策材料を研究

 シリーズ「ゴムの先端研究」の第12回は、東京工業大学物質理工学院材料系助教で博士(工学)の赤坂修一氏。赤坂氏が進める振動、騒音対策材料の研究について話を聞いた。


 ■振動、騒音対策材料
 振動や音に対し、制振、防振、吸音、遮音といった対策をするための振動、騒音対策材料を研究している。

 制振は振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、エネルギーをロスさせるというもので、防振は例えば自動車のエンジンのような振動源からの振動の伝達経路を制御するものだ。制振、防振の分野ではゴムやエラストマーといった、材料として柔らかいものが中心になる。中でもゴムは配合次第で硬くも柔らかくも、エネルギーロスもコントロールでき、欠かせない材料の一つだ。

 一方、音に関しては、音エネルギーを吸収する吸音と反射する遮音がある。人が家の中にいることをイメージして、家の中で出た音を静かにすることが吸音で、遮音は音を外に出さない、外の音を中に入れないというものだ。吸音においては、ガラス繊維などの繊維材料やウレタンフォームなど、空気を含む材料が主に使われる。また、遮音に関しては基本的に重いほど性能が高い。音は壁を通り抜けるわけではなく、壁に音が当たり壁が揺れることで、それがスピーカーとなり音が出てくる。つまり、音が当たる対象が動きにくい、重いものであれば良い。これは質量則と呼ばれ、材料の面密度(単位面積あたりの質量)が大きいほど遮音効果は高いとされる。

 ■音響メタマテリアル
 研究しているものの1つに、音響メタマテリアルというものがある。

 メタマテリアルは元々光学系からスタートした研究で、波長よりも小さい構造を周期的に並べることによって、負の屈折率といった自然界にない物性を人工的に作り出した材料だ。我々の研究では、音波を対象とするため、音響メタマテリアルと呼ばれる。遮音は質量則、つまり面密度で遮音性が決まると言ったが、音響メタマテリアルでは、そのような従来超えることのできなかった絶対的ルールを超える材料を作ることが可能となる。

 材料物性は、材料に何らかの信号を加えた際の信号と応答との関係によって決まる。例えば、粘弾性は、周期的なひずみを加えた際の応力との関係から導かれる。これらの物性は、分子の構造や結晶、非晶といった微細構造などに由来しており、材料の物性を変えるのには限界がある。

 一方、メタマテリアルでは、材料物性による応答に、構造の応答が加わる。波長よりも小さな構造を周期的に並べることで、材料全体にその影響が現れ、材料物性が変化したようになる。

 現在、音響メタマテリアルを用いた遮音材を、実用化に向けて企業と共同で開発している。

 ■ラム波を用いた力学物性測定法
 ラム波を用いた力学物性測定法も進めている研究の1つだ。ラム波は物質の内部を伝搬する弾性波の一種だ。音波、超音波を材料に照射すると、材料内部で波が反射を繰り返しながら伝搬し、サンプル表面が振動する。振動挙動は、材料物性に依存しているため、振動形状を測定し、逆算することで、材料物性を導き出す、それがラム波を用いた物性測定法だ。

 吸音材として研究している、繊維径が1マイクロメートル以下の非常に細いナノファイバーという繊維からなる不織布の弾性率を測りたいと考え、ベルギーのKULeuven大学のChrist Glorieux教授とBert Roozen教授から指導を受けた。現在は、エラストマーシートや織物などへの適用を行っている。

材料と振動・音響分野の架け橋を担いたい

 ■研究の先に描く未来
 材料科学を軸にして振動、音響分野にまたがる研究を行っている。

 元々、有機材料工学科の出身で、高分子の力学的性質に関する研究からスタートし、振動、音に関する知識を学んできた。材料の研究者で音、振動に詳しい人は少ない。一方、音響学、振動学の研究者で、材料に詳しい人も決して多くない。そのため、材料と振動・音響分野の架け橋としての役割を担っていきたい。

 振動や音に対し、それらをゼロにするというのは目指す方向ではあるが、材料に要求される性能は決してそれだけではない。例えば、適度に吸音しつつ熱にも強いなど、振動だけ、音だけが防げればそれだけで良いという材料はあり得ない。

 振動や音の分野から材料に対して、熱に強いものが欲しい、柔らかいものが欲しいといった様々なニーズに対して、材料や構造の提案ができるよう、多くのカードを持っている状態にしたいと考えている。また、例えば、材料科学の中で新しい材料が生まれた際には、それを音や振動の世界に紹介したいと考えている。もちろん、提案や紹介をするためには、それがなぜかということを知らなければならないので、メカニズムの理解が必要になり、それが測定法の研究にも繋がっていく。

 橋渡しについては現在も進めているが、それをもっと深めていきたいと考えている。

 ■エラストマー討論会
 日本ゴム協会が主催し、11月26~27日に開かれるエラストマー討論会は、今年はオンラインで開催される。それに併せて、日本ゴム協会では10月末まで「WEBからエラストマー研究に触れよう!」と題した入会キャンペーンを行っている。入会特典として入会金免除、会費は半年分(年の途中からの入会のため)で、入会者、紹介者ともにQUOカード1,000円分が進呈される。また、エラストマー討論会には、早期登録(10月23日まで)することで、1万円以上割引で参加することができる。

 今年のエラストマー討論会は、国内の最先端研究に触れることができるだけでなく、通常では参加することが稀な海外の著名なゴム研究者も数多く参加する。また、オンライン開催のため、どこからでも見ることができる。これまでにない破格のキャンペーンも行っているので、そうした最先端に触れる良い機会として、日本ゴム協会に入会してもらえればと思う。

 ■ホームページのリニューアルも予定
 日本ゴム協会では今後、ホームページのリニューアルも予定している。学会のホームページは必要な情報を得るために訪れるものなので、コンセプトは、欲しい情報に迷わず、最短でたどり着けることである。また、今回のエラストマー討論会では、専用ページを作成したので、ご覧いただければ幸いだ。

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