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【特別寄稿】2020年のゴム相場を見通す

天然ゴムの動向、2020年の急落リスクは後退

その他 2020-01-06

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 2020年の天然ゴム相場は、緩やかなペースで下値切り上げを打診する展開になるだろう。


 世界経済は依然として脆弱であり、天然ゴム需要環境の劇的な改善は見込まれない。国際通貨基金(IMF)によると、世界経済成長率は2019年の3.0%から2020年には3.4%まで上振れする見通しであるが、中国に関しては6.1%から5.8%、米国に関しては2.4%から2.1%と下振れが予想されており、タイヤ需要環境の劇的な改善は見込まれていない。世界の新車販売市場は依然として脆弱であり、買い替え需要によって辛うじて総需要の大幅な落ち込みを回避している状態にある。鉱業や旅客機などの大型タイヤ市場も減速感が目立ち、タイヤメーカー各社の業績見通しからみても、大きく崩れることはないが、厳しい需要環境が想定される。

 ただ、米中通商環境が最悪期を脱することが可能であれば、資源価格全体に上振れ圧力が強まり易く、天然ゴム相場のみが大きく値崩れを起こすリスクは限定されるだろう。米中通商協議については先読みが難しく、2020年は米大統領選が展開されることで、トランプ米大統領の行動によっては通商リスクが一気に高まる可能性も残されている。ただ、極端な混乱がみられないのであれば、少なくとも世界経済の先行き不透明感は後退し、産業用素材市況は全体的に下値をサポートされ易くなる。

 一方、供給サイドでは「ペスタロチオプシス」の感染がどこまで広がりを見せるのかが焦点になる。2019年はインドネシアからマレーシア、タイへと感染地域が広がりを見せたが、まだ大規模な減産圧力が発生している訳ではない。ただ、感染被害のコントロールに失敗すると大規模な減産圧力が発生する可能性もあり、需給バランスが大きく歪む事態も想定しておく必要がある。これまで品質管理に十分な投資を行ってこなかった「ツケ」が、病害の発生という形で供給不安を高めている可能性がある。


 2020年の生産環境には大きな影響が生じない可能性もあれば、壊滅的な被害が発生する可能性もある。現在も実際にどの程度の生産インパクトが生じているのか正確な状況が把握できないため、2020年の天然ゴム需給に対して大きな不確実性をもたらすことになる。

 また、近年はグローバルな天候不順で、農産物生産は不安定化し易い。2019年も上期に降水量不足から土壌水分が落ち込み、天然ゴム生産に影響を及ぼした。2年連続で土壌水分不足が発生すると、供給環境の不安定化が促されることになる。仮に天候不順と病害が同時進行する事態になると、思いがけない値上りが実現する可能性もある。

 需要環境に関しては、サプライズ的な動きがなければ伸び悩みつつも、大きく崩れることはない見通し。生産環境に関しては、天候と「ペスタロチオプシス」の被害拡散状況に依存するが、少なくとも大きく伸びる環境にはないだろう。在庫水準は引き続き高めの推移が想定されるが、米中通商リスク軽減が進むのであれば、世界経済見通しの改善から天然ゴム相場が改めて値崩れを起こすリスクは後退する。米中通商リスクをどこまで緩和できるのかに依存する不安定な地合が続くが、改めて150円割れを打診するリスクは後退しており、200円台での取引時間は2019年よりも増える方向性になるだろう。

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