【シリーズ】SUSTAINABLE & RUBBER
TOYO TIRE、CO2を再資源化しタイヤ原材料へ-共創も視野に、2030年でサステナブル原材料比率40%を目指す
SUSTAINABLE&RUBBER 2023-08-28
TOYO TIREはサステナブル原材料開発を推進している。目下、2030年にタイヤ原材料に占めるサステナブル原材料比率を40%にすることを目指す。その中で、同社は富山大学との共同研究で「二酸化炭素(CO2)を出発物質とするブタジエンゴムの合成」について発表。排出されるCO2を再資源化しタイヤ原材料への採用も視野に入れた、これまでにない新たな取り組みが注目されている。同社はこの新技術を応用推進し、サステナブル原材料比率の向上や循環社会の実現、さらにはカーボンニュートラル達成への貢献をしていきたいと考えている。
2050年にタイヤのサステナブル原材料比率を100%に
TOYO TIREは、タイヤ原材料に占めるサステナブル原材料の比率を2030年に40%、2050年には100%にすることを掲げている。
サステナブル原材料採用においての課題は主に3つある。①性能②供給③コストだ。現在、様々なサステナブル原材料が誕生している。一方で、既存の原材料と比べタイヤ性能を著しく向上させる機能を発揮するかといえば、答えは否だ。そのため、現状ではサステナブル原材料を採用するとしても、価格に高付加価値として上乗せする難しさがある。
「サステナブル原材料へ置換していくうえで性能面に問題がないかしっかり見極め、また各材料のコストや供給面も鑑みて優先度をつけて採用を計画的に進めている。コストと性能のバランスを見極めながら使用していく必要がある」(TOYO TIRE)
そこで同社独自の材料設計基盤技術「ナノバランステクノロジー」やマテリアルズ・インフォマティクス(MI)が活きる。
「サステナブル原材料を当社では大きく①リニューアブル原材料②リサイクル原材料と分け、各種分析・解析技術を用いつつ、どの原材料が使えそうかといった検討を、可能な限り短期間で実現しようとしている。現在は少量添加した際に性能や加工性が変化しない材料の見極めを先行して進めている。データベースが蓄積されていけば、より精度や採用スピードも上がっていく」(同)
二酸化炭素を資源に
タイヤは、車に装着し使用されている間に最もCO2を発生させる。原材料調達から廃棄・リサイクルされるまでのタイヤのライフサイクルのうち、使用段階がCO2排出の約90%を占めている。これを下げるためには、タイヤの性能として転がり抵抗の低減、すなわち低燃費性の改善が必要不可欠である。
「EV化の加速など、自動車自体がCO2排出を低減できるような仕組みになってきた。タイヤもそこに追随していくことが求められている。また当社としては、この90%のCO2をなんとか循環社会に組み込めないかと考えている」(同)
2023年5月、同社は「CO2を出発物質とするブタジエンゴムの合成」について研究成果を発表した。これは2016年から開始した富山大学との共同研究によるもので、CO2をエタノールへ高収率で変換する触媒を新たに開発し、CO2を原料としてタイヤ主原料の一つであるブタジエンゴム(BR)を合成するものだ。
乗用車用タイヤの原材料の約50%はゴムで構成されているが、そのうち約30%を占めるのがブタジエン系ゴム――スチレンブタジエンゴム(SBR)、BRだ。ゆえにタイヤ業界では、石油以外の天然由来の代替原料によるBRの実現や活用を模索する動きが活発化している。
富山大学は、2021年に「カーボンニュートラル物質変換研究センター」を開設するなど、CO2を原料とする化学品への転換に注力している。そこで同大学とTOYO TIREが「BRの生成にCO2そのものを石油由来原料から代替適用できないか」という課題をテーマに、共同研究を進めてきた。
「キーとなるのは新規触媒だ。これは金や銀、白金族以外の金属である卑金属を触媒に使うことで、高収率でエタノールへの変換を可能にしたことは1つのブレイクスルーポイントとなった」(同)
一方で課題もある。そのうちの1つはグリーン水素の調達についてだ。
「エタノールに変換するにあたって、水素が必要になる。カーボンニュートラルなBRの合成のためには、その水素をいかにグリーン調達するのか、どの調達先が最適なのかなどを含め、検討している最中だ」(同)
今回の成果をもとに、触媒や合成プロセスの効率化、コストや品質面などの検討を進めていく。
「CO2を資源にできる、リサイクルできる、という観点で今回多くの反響があった。当社の着想は間違っていなかったと感じている」(同)
新しいことに挑み続けるTOYO TIREの姿勢
同社は今後サステナブル原材料の採用を推進していく方針だ。現在タイヤメーカー各社も同様に同原材料の採用と実用化に向け全力を上げ、取り組みを進めている。
「将来的には、同じ“きょうそう”でも競争ではなく共創の方へ舵を切っていく必要があるだろう。ステークホルダーとも手を組まないと、実現は実際のところ難しい」(同)
また研究の面では、「今回の研究開発事例のように、“実は再利用できる素材(原材料)”をいち早く見つけ出していきたい。富山大学との共同研究のようなオープンイノベーションも国内外を問わず積極的に実施していきたい。革新的なことをより早く実現するには、連携の強化も必要だと考えている」(同)。
ゴム報知新聞版「SUSTAINABLE & RUBBER」は、ゴム業界に関連する国や団体、企業などによる「持続可能な社会の実現」に向けた活動に焦点を当てるシリーズです。なお、弊社ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の掲載内容とは異なります。
ポスティコーポレーション発刊のムック本「SUSTAINABLE & RUBBER」(2022)の詳細はhttps://gomuhouchi.com/other/49351/まで。
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