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【マーケットアナリティクス】

天然ゴム相場、上海安と円高で200円割れ

連載 2017-04-27

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=200円の大台を割り込む展開になった。4月は5日の250.80円をピークにほぼ一本調子の急落地合になり、昨年11月15日以来となる約5カ月半ぶりの安値を更新している。

 背景にあるのは、上海ゴム相場が改めて大きく水準を切り下げていることだ。前週は1トン=1万5,000元の節目割れで下げ一服感が浮上する場面もみられたが、4月19日の取引で1万4,000元台を割り込むなど、なお安値更新サイクルが維持されていることが確認されている。

 為替市場では、北朝鮮情勢を巡る地政学的リスクの高まりから円高傾向が維持されたこともあり、上海ゴム相場安と円高の二重苦が東京ゴム相場を大きく押し下げている。

 1-3月期の中国国内総生産(GDP)は前期比年率6.9%増となり、中国経済の底固さを示すことに成功している。これは2四半期連続で成長が加速したことを意味する。ただ、天然ゴムに限らずコモディティ市場全体がこうした中国の強めの経済指標の恩恵を受けることができず、逆に値下がり傾向を加速させている。

 従来であれば、こうした良好な経済指標が発表されれば、タイヤ需要拡大の思惑から投機買いが膨らむ傾向にあった。しかし、足元では金融引き締め傾向を正当化させることで、中国コモディティ市場からの資金流出が逆に加速しかねないとの懸念の方が優勢になっている。実際に、鉄鉱石や石炭、銅相場なども戻り売り優勢の展開が続いており、値ごろ感はあるものの中国コモディティ市場全体からの資金流出傾向は維持されている。

 タイではソンクラン(水掛け祭り)の連休が終わり、暦の上では乾季から雨季への移行が実現している。しかし、中央ゴム市場の集荷量などは一段と減少傾向を強めており、実際の生産環境は減産期のピークを迎えている。もっとも、こうした季節要因を反映して産地主導で安値是正を進めるような動きは見られない。東南アジア全域で例年よりも降水量が多めに推移していることで、季節サイクルに連動した価格圧力は確認できず、産地でも専ら上海ゴム相場の値動きと連動した展開が続いている。

 月末にかけても上海ゴム相場の動向が注目されるが、中国では金融機関の監督強化から上海株価が急落するなど、資産バブル抑制の動きが活発化している。地政学的リスクを考慮に入れなくても中国系投資家が積極的にリスクを取りづらい状況が続く。過熱感の高まりに注意が必要だが、上海ゴム相場主導で一段安を試すリスクが残る。

(マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努)

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