【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、300円付近で小動き続く
連載 2024-05-13
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=300~310円をコアにほぼ横ばいの展開になった。上海ゴム相場、産地相場ともに明確な方向性を打ち出せず、ゴールデンウィークの大型連休前後で目立った値動きはみられなかった。為替市場で円相場が大きく揺れ動いているが、円建てゴム相場に対する影響は限定的だった。
上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元台前半でやや底固く推移したが、小動きに留まっている。5月1~3日の労働節の連休後は、1万4,000元割れに抵抗をみせている。中国共産党は4月30日に中央政治局会議を開き、党の重要会議である「3中全会」を7月に開催することを決めた。同会議では長期的な経済政策運営の方針などが話し合われるが、マーケットではこれに合わせてなんらかの景気対策が打ち出されるとの期待感が急浮上している。上海株式相場は2023年9月上旬以来の高値を更新しており、その流れで上海ゴム相場も下値を支えられた。しかし、上海ゴム相場に関しては1万4,000元割れに抵抗をみせるも、大きく相場水準を切り上げていくような動きまではみられなかった。
産地相場も方向性を欠いている。タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、5月9日時点で前週比0.2%安の76.19バーツとなっている。一時75バーツ台まで値下がりしてダウントレンドが継続中であることを確認したが、大きな値動きには発展しなかった。
タイでは減産期のピークを過ぎつつあるが、まだ集荷量は低迷している。足元の低集荷環境で値上がりすることも、今後の集荷量回復見通しで値下がりすることもなく、決定打を欠いている。タイ北部などでは引き続き高温、強風、雷雨などの天候障害が報告されているが、ゴム相場に対する影響は限定的だった。産地相場は3月中旬にピークアウトした後の値下がり傾向が続いているが、4月末から5月初めにかけては値動きの鈍さが目立つ。産地相場の上値の重さがJPXゴム相場の上値も圧迫したが、300円の節目割れから値崩れを促すまでのインパクトはみられなかった。
一方、為替相場が大きく変動している。4月29日には1ドル=160.03円と34年ぶりの円安になったが、日本当局が2度にわたって円買い・ドル売り介入を実施し、5月3日には151.85円まで円安是正が進んだ。しかし、その後は再び155円台まで円安が進行するなど、極端に不安定な値動きが繰り返されている。ただし、円建てゴム相場を大きく乱高下させるまでのインパクトは見られなかった。中東情勢の緊張緩和期待で原油相場が約2カ月ぶりの安値を更新していることも材料視されなかった。
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