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連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」(55)

鉄道総合技術研究所とゴム

連載 2026-01-05

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
 2025年秋に東京国立市にある鉄道総合技術研究所を訪問しました。日本ゴム協会関東支部見学会の一環で訪問し、研究所の中を案内していただきました。

 鉄道とゴムとのかかわりは、いろいろあります。防振ゴムは車両の揺れをいかに抑えるか。高速で走る車両はレールの上に台車があり、その台車の上に車両車体が載っています。昔は金属ばねで台車と車体がつながっていましたが、現在は鉄道車両車体を空気ばねで支えていることが多いようです。

鉄道用空気ばね(住友電工のサイトより)


 住友電工やニッタ化工品(旧東洋ゴム工業防振ゴム事業)が車両用の空気ばねを作っています。鉄道総合技術研究所のレポートによると、1964年新幹線に住友電工(製造は住友理工)の空気ばねが採用されましたが、その前に1957年に京阪電気鉄道の台車に空気ばねが日本で初めて採用されたとのこと。また曲線が多い線区に高速で鉄道を走らせるため、車体をわざと傾けて高速で通過することが必要で、そのため、空気ばねで車体を左右に傾ける傾斜機構をつけた台車が使われています。

 これらの空気ばねはタイヤと同じような構造をしており、空気を遮断するブチルゴム、コードでの補強層、リムにはまるワイヤービード部があり、まるでタイヤそっくりです。鉄道総合技術研究所には空気ばね大型試験装置があります。

 鉄道車両にはきびしい難燃性が求められます。今回の見学会ではその燃焼試験室も見学しました。自己消火性が必要です。特に天井材など高い位置の材料ほど高い燃焼ランク(不燃性・極難燃性など)が必要とされ、防火材や難燃剤を添加した素材が使われています。その試験はコーンカロリメータ発熱性試験で天井材では10分間の総発熱量と最大発熱速度を測る試験も追加で要求されます。内装ゴム部品も難燃性が求められます。

 さらに車両のドアが閉まるとき、手や傘が挟まっていることを検知するセンサーについて説明がありました。ドアがちゃんと閉まらなければ何かを挟んでいると考えます。かばんや手首であれば、挟み込みを検知できますが、傘ぐらい細いと検知しにくい。それをどうやって検知するか?ドアの先はゴムのパッキングシールがあります。このゴム部品にセンサーを組み込んで、ゴムの一部がへこむことで何かを挟んでいると感知します。ドアを開け閉めで動きますから、ケーブルを使えず、ドアから無線で車体側に信号を送るそうです。感圧センサーを内蔵した戸先ゴムと非接触給電装置を組み合わせた、戸挟み検知システムで、検知が困難であった直径10mm程度以下の物の挟み込みや、携帯ストラップといった細い紐による引きずりの検知が可能だそうです。その実際のドア挟み試験装置を見学できました。

戸挟み検知システムのドア先端にあるゴム部品(鉄道総合技術研究所のサイトより)



 最後に研究所に置かれているリニアモーターカー(実験車両)の前で日本ゴム協会見学会参加者で記念撮影をしました。

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