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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、通商リスクと円高で反落

連載 2025-02-10

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=394.90円まで上昇して2024年10月21日以来の高値を更新した後、370円台中盤まで急反落する不安定な地合になった。


 2025年1月末にかけては、中国市場が春節(旧正月)の連休で薄商いになる中、特段の売買材料が見当たらない中で上値追いの展開になった。しかし、2月に入ってからは米中通商リスクの織り込みもあって急反落した。為替が大きく円高・ドル安に振れたこともネガティブ。1月14日以来の安値を更新している。

 上海ゴム先物相場は、1月27日の1トン=1万7,320元に対して、連休明け後も1万7,000元台前半での取引になっている。春節の連休中に米中通商環境が悪化したことで上値は重かったが、本格的な値崩れは回避されている。非鉄金属や穀物、さらには株式市場も先行き不透明感を警戒しながら、総じて冷静な反応を見せている。

 トランプ米大統領は2月1日、4日付で中国からの輸入品に対して10%の関税を課すと発表した。同日に予定されていたカナダとメキシコに対する関税発動は1カ月先送りされたが、中国に対しては予定通りに発動されている。当然に中国政府は強く反発し、米国産エネルギーなどの一部輸入品に対して10~15%の関税を課す報復措置を10日から行うと発表した。しかし、マーケットでは中国政府の反応は冷静との評価が強く、一気に通商リスクを織り込む展開は見送られた。

 トランプ政権一期目の際には、中国政府は米国の関税に強く反発して厳しい報復措置を講じていたが、今回の対応は今後の交渉余地を残すものと評価されている。トランプ米大統領も、中国とのトップ会談に意欲を示しており、米国への違法薬物流入、貿易不均衡などの問題に進展がみられれば、関税取り消しに含みを持たせる発言をしている。今後の展開は読みづらいが、上海ゴム相場は上値が重いながらも大きな値動きを見せていない。

 こうした中でJPXゴム相場は大きく下げているが、1月末にかけて投機買いが膨らんでいたことに対する反動安に加えて、為替が円高に振れた影響が大きい。特に為替相場は1ドル=155円水準での保ち合い相場から、2月6日には一時151円台に突入する円高・ドル安になっている。JPXゴム相場は高値から20円幅の値下がりになっているが、その4割程度は円高要因で説明がつく。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、1月末の1キロ=76.59バーツが2月5日には72.67バーツまで下落。産地天候不順、減産期入りの値上がりは続かず、消費地相場連動で産地相場も値下がりしている。

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