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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、安値更新後、反発に転じる

連載 2024-11-11

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=345.00円まで値下がりして8月23日以来の安値を更新した後、360円台後半まで切り返す不安定な地合になった。

 11月入り後も産地相場の値下がりと連動した下値模索の展開が続くと同時に、逆サヤ(期近高・期先安)の解消も進み、産地天候不順を手掛りとした上昇相場の反動安局面が続いた。しかし、短期的な売られ過ぎ感が強まったことに加えて、11月5日の米大統領選後に不透明感の解消で株高・円安が進むと安値修正が促され、安値から20円超の切り返しになっている。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万7,460元まで値下がりして9月23日以来の安値を更新した後、1万8,000元台前半まで切り返す展開になった。産地連動でじり安の展開が続いていたが、リスクオン環境を背景に安値修正が促された。中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会が開催されたが、8日の会期終了後にもなんらかの景気刺激策が打ち出されるとの観測が広がったこともポジティブ。実際に大型景気対策が打ち出されるか否かが注目されている。

 11月5日に米大統領選が行われ、トランプ元大統領の勝利が決まった。トランプ氏は、輸入品に対して一律10~20%、中国に対しては60%の関税を課す方針を示している。実現すれば、前政権時代のような貿易戦争が再び起きる可能性が高く、中国のタイヤ需要環境にも大きな変化が生じる可能性がある。また貿易紛争が世界経済の停滞を招けば、世界のタイヤ市場にも大きな混乱が生じる可能性がある。しかし、マーケットでは米大統領選の結果が早期に確定したことが材料視されており、米国株は過去最高値を更新し、低迷が続いていたゴム相場に対しても安値修正の動きがみられた。

 また、トランプ氏の政策はインフレリスクを高めるとの見方から、米長期金利が急伸し、ドル高(円安)圧力が強まったことも、円建てゴム相場に対してはポジティブ。1ドル=155円の節目に迫り、約3カ月ぶりの円安・ドル高環境になっている。為替要因でも買いを入れる動きが目立った。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、11月7日時点で前週比1.1%高の1キロ=70.78バーツ。産地天候リスクの軽減で一時67.23バーツまで値下がりしていたが、週後半は消費地相場連動で安値修正の動きが優勢になった。

 ただし、JPXゴム相場では改めて期近限月に対してプレミアムを加算していくような動きはみられなかった。再び天候リスクや供給不安を織り込んでいるというよりも、持ち高調整が中心の反発であることがうかがえる。

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